よこがお

映画『よこがお』

『よこがお』は、2019年7月26日に公開された日本とフランスの合作映画です。国際的な評価も高い深田晃司が脚本と監督を務め、2016年の映画『淵に立つ』でも組んだ筒井真理子が主演を務めています。

本作は、ある女性が無実の罪を着せられ、社会的に孤立し、「加害者」として見なされる中で人生を大きく狂わされていく様、そしてその後の彼女の行動を描いたヒューマンサスペンスです。タイトルの「よこがお」には、人の持つ多様な側面や、物事の片側しか見えていない状態が暗示されています。「ある女のささやかな復讐。」というキャッチコピーが、物語の核心を示唆しています。

あらすじ

物語は、見慣れない中年女性「リサ」が、初めて訪れる美容室で特定の美容師、米田和道を指名する場面から幕を開けます。この「リサ」こそ、かつて白川市子と名乗り、終末期医療の現場で訪問看護師として献身的に生きていた女性です。

市子は一年ほど前から、末期がんを患う元画家の大石塔子のもとへ訪問看護に訪れていました。大石家は、塔子、嫁の洋子、そして娘たち、長女の基子と中学生の次女サキの四人家族でした。ニート生活を送っていた基子は、介護士を目指す自分に勉強を教えてくれる市子に次第に惹かれ、尊敬以上の感情を抱くようになります。

ある日、市子が喫茶店で基子とサキに勉強を教えていると、市子の妹の息子、鈴木辰男が教科書を届けに現れます。彼は大きな荷物を背負い、北海道へ旅立つと言います。

市子は婚約者の戸塚健二と共に大石家を訪れた際、サキの失踪を知らされます。一週間後、サキは無事保護されますが、テレビのニュース速報で報じられた犯人の名は、市子の甥である鈴木辰男でした。そのニュースを市子と共に見ていた基子もまた衝撃を受けますが、何も語りません。

物語は並行して、冒頭のリサと米田の出会いの後の時間軸を描きます。道で偶然再会したリサは、米田のアパートに出入りする基子を密かに見守ります。やがて米田と美術館デートをしたリサは、塔子が既に亡くなっていたことを知ります。

一方、市子は基子と話し合い、辰男の件についてしばらく沈黙を保つことに決めます。サキが学校でいじめられている様子に心を痛める市子でしたが、市子の婚約者に嫉妬心を募らせていた基子は、市子の電話番号をマスコミにリークします。これにより、市子が「加害者の家族」として週刊誌に報じられ、自宅には報道陣が押し寄せます。市子は大石家での訪問介護を辞めざるを得なくなります。さらに、市子の結婚を妬む基子は、テレビの取材で市子に不利な証言を行います。世間から「加害者の一味」と見なされた市子は、勤務していた訪問看護ステーションを退職に追い込まれ、マスコケミによる嫌がらせで住む場所まで失います。絶望の淵に立たされた市子のもとに基子が謝罪に訪れますが、市子はそれを受け入れられません。婚約者の戸塚のもとを訪れ、その息子に別れを告げますが、被害者支援団体にも助けを求められず、孤立を深めます。その頃、まさに失意の中にいた市子は、偶然にも米田和道と出会うのです。

市子は「リサ」と名を変え、かつて基子の婚約者であった米田に接近します。米田を誘惑し、基子へその証拠となる画像を送りつけることで、基子への復讐を果たそうとします。しかし、ボランティア活動に参加する公園で基子の幻影に悩まされるなど、彼女の心は安らぎを得られません。その後も、水死する自身の幻想を見るなど、精神的な苦悩が続きます。

やがて辰男が出所します。彼の母親が亡くなったため、市子は辰男を引き取り、共に暮らすことになります。二人はサキの家へ謝罪に向かいますが、大石家は既にそこを離れていました。帰路、偶然にも看護師として働く基子の姿を見かけます。

キャスト

白川市子 / 内田リサ：筒井真理子
大石基子：市川実日子
米田和道：池松壮亮
鈴木辰男：須藤蓮
大石サキ：小川未祐
戸塚健二：吹越満
大石塔子：大方斐紗子
大石洋子：川隅奈保子

スタッフ

脚本・監督：深田晃司
音楽：小野川浩幸
撮影：根岸憲一（J.S.C.）
照明：尾下栄治
美術：原田恭明
録音：木原広滋

関連情報

本作は、監督自身による小説版も出版されています。また、2021年4月にはアメリカの「クライテリオン・チャンネル」でも公開されました。

公式サイトやSNSアカウントも開設されています。

もう一度検索