よせばいいのに

楽曲「よせばいいのに」の歩み

「よせばいいのに」は、日本の歌謡曲における興味深い事例の一つです。この楽曲は、もともと三浦弘とハニーシックスによって生み出され、1976年5月にシングルとして世に出されました。しかし、この曲が広く知られるようになったのは、その後に複数のアーティストによってカバーされ、一種の「競作」となったためです。

オリジナルの発表から約1年後の1977年には、秋しげるとビューティフル・ロマンが、彼らのデビューシングルとしてこの楽曲をリリースしました。そして、さらにその2年後、1979年6月には、敏いとうとハッピー&ブルーが新たなアレンジを加えたリメイクシングルとして発表します。この敏いとうとハッピー&ブルー版が大きな反響を呼び、翌1980年にかけて長期にわたりヒットを記録しました。

敏いとうとハッピー&ブルー版の発売と同じ日には、田辺靖雄も自身のカバーシングルとしてこの曲を発表しています。これにより、「よせばいいのに」は、オリジナル版、秋しげるとビューティフル・ロマン版、敏いとうとハッピー&ブルー版、そして田辺靖雄版という複数のバージョンが存在し、市場で競い合う形となりました。オリジナルの三浦弘とハニーシックス版、および秋しげるとビューティフル・ロマン版もこの時期に再発売され、楽曲への注目度が一層高まりました。

敏いとうとハッピー&ブルーによる大ヒット

「よせばいいのに」を語る上で欠かせないのが、敏いとうとハッピー&ブルーによるカバーバージョンです。このバージョンは、当時の人気テレビ番組であるTBSテレビ系『ザ・ベストテン』でも大きな注目を集めました。1979年11月1日には「今週のスポットライト」コーナーで初めて登場し、その存在感を示しました。

その後、このバージョンは番組のランキングに食い込み、1979年11月15日から翌1980年1月31日までの期間、なんと11週連続で週間ランキングのトップ10圏内に留まるという快挙を成し遂げました。これは、当時の歌謡曲シーンにおける楽曲の人気の高さを如実に物語っています。

敏いとうとハッピー&ブルーのシングルには、「よせばいいのに」の他に「佐賀は武家町悲恋町」がカップリング曲として収録されています。楽曲の制作クレジットは以下の通りです。

よせばいいのに
作詞・作曲：三浦弘
編曲：竜崎孝路
佐賀は武家町悲恋町
作詞：拝良
作曲：敏いとう
編曲：京建輔

田辺靖雄版とその他のカバー

敏いとうとハッピー&ブルー版と同じ日に発売された田辺靖雄によるカバーシングルも、「よせばいいのに」が複数のアーティストによって歌われるきっかけの一つとなりました。田辺靖雄版シングルの収録曲とクレジットは以下の通りです。

よせばいいのに
作詞・作曲：三浦弘
編曲：斉藤恒夫
そのままで…
作詞：佐々木京子
補作詞・作曲：田辺靖雄
編曲：斉藤恒夫

このように、異なる編曲家によるアレンジで同日にリリースされたことも、「よせばいいのに」が「競作曲」として話題を集めた要因と言えるでしょう。

また、「よせばいいのに」は、その後も多くの歌手によってカバーされ、時代を超えて親しまれています。主なカバーアーティストとしては、以下のような名前が挙げられます。

テレサ・テン（1980年のアルバム『演歌のメッセージ』に収録）
はやぶさ（2013年のアルバム『歌謡カヴァーソングス』に収録）
川上大輔（2014年のアルバム『パシオン 〜言葉に出来ない男です〜』に収録）
宍戸マサル（2017年のアルバム『宍戸倶楽部』に収録）

オリジナル版の誕生から数十年を経た今もなお、様々なアーティストによって歌い継がれている事実は、「よせばいいのに」が持つ普遍的な魅力と、人々の心に響くメロディー、そして情感豊かな歌詞が、時代や世代を超えて愛され続けている証と言えるでしょう。この楽曲の複数バージョンによる競作と、それに続く度重なるカバーは、日本の歌謡曲史における興味深い一章を形成しています。

（注記：この解説は、提供された情報に基づいています。）

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