らくらく無線スタート

らくらく無線スタート：無線LAN接続を簡単に実現するNEC独自のシステム

無線LANの普及に伴い、複雑な設定に悩むユーザーが増加しました。そんな中、NECアクセステクニカ（現NECプラットフォームズ）は、2004年以降、Atermシリーズを中心に展開する無線LANルーターに搭載された独自の自動設定システム「らくらく無線スタート」を開発しました。このシステムは、バッファローのAOSSと並び、無線LAN接続における二大設定システムとして広く認知され、Wi-FiアライアンスによるWPS（Wi-Fi Protected Setup）の策定にも影響を与えた重要な技術です。

無線LAN接続の容易さとセキュリティの両立

無線LANのセキュリティ確保には暗号化が不可欠ですが、従来の方法は暗号化キーを手動で入力する必要があり、一般ユーザーにとって大きなハードルとなっていました。「らくらく無線スタート」は、この問題を解決するために開発されました。アクセスポイント（親機）とクライアント（子機）の双方を待機状態にし、アクセスポイントの専用ボタンを押すだけで、子機を登録し無線LAN接続を確立する画期的なシステムです。

幅広い機器との互換性

「らくらく無線スタート」に対応する機器は多岐に渡ります。NECのAtermシリーズの無線LANルーターやモバイルWi-Fiルーターはもちろん、回線事業者向けのレンタルホームゲートウェイルーターにも搭載されています。子機側も、Atermシリーズの無線LAN子機や、Windows XP SP2以降を搭載した多くのPC（専用ソフト「らくらく無線スタートEX」が必要）、ニンテンドーDSシリーズ、PlayStationシリーズ、一部無線LANプリンター、Androidスマートフォンなど、様々な機器が対応しています。PCの場合は、メーカーを問わず多くの機種で利用可能です。

WPS対応と機能強化

WPSが策定された後、Atermシリーズは「らくらく無線スタート」とWPSの両方に対応するようになりました。親機のボタンを押すことで、WPSにも対応するようになり、より柔軟な接続方法を提供しています。ただし、「らくらく無線スタート」とWPSの同時待機はできません。

セキュリティと操作性

「らくらく無線スタート」は、親機にあらかじめ設定されている暗号化方式を使用するため、セキュリティレベルの低下を防ぎます。暗号化方式がWEPしか対応しない古い機器の場合、接続に失敗する可能性がありますが、新しい機器では、マルチSSIDのWEP用のセカンダリSSIDに接続することで対応しています。また、MACアドレスフィルタリングやESSIDステルスを使用している場合でも接続可能です。ゲストSSID対応の親機では、「オーナーSSID」と「ゲストSSID」のどちらに接続するかを選択できます。

操作手順

1. 子機側で「らくらく無線スタート」を起動します（ボタン操作または専用ソフト）。
2. 親機の「らくらくスタート」または「SET」ボタンを約10秒間押します。
3. 親機のPOWERランプが緑点滅になり、ネゴシエーションが始まります。
4. 数十秒後、POWERランプが橙点滅に変わればネゴシエーション成功です。
5. 親機のPOWERランプが橙点灯（約10秒）した後、緑灯に戻れば設定完了です。

※機種によっては操作手順が異なる場合があります。

他方式との比較

「らくらく無線スタート」は、AOSSやWPSと比較して、親機に設定されている暗号化方式をそのまま使用するため、セキュリティレベルが比較的高い点が特徴です。一方、暗号化方式の柔軟性という点では、AOSSやWPSに劣る場合があります。

まとめ

「らくらく無線スタート」は、無線LAN接続における初期設定の手間を大幅に削減し、セキュリティレベルも維持できる優れた自動設定システムです。幅広い機器との互換性も備え、多くのユーザーにとって使いやすいシステムと言えます。ただし、WPSのような汎用性や柔軟性には欠ける部分もあります。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、適切な設定方法を選択することが重要です。

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