ろくろ首 (落語)

ろくろ首—古典落語の魅力

『ろくろ首』は、古典落語の一つであり、1905年に初代三遊亭圓左が新作として演じた物語です。この演目は、実は万延2年に書かれた「風流昔噺」にその素材が記されており、東大落語会では、上方からの伝承作品であることが推測されています。物語の内容は、見慣れた日常に潜む奇妙さや、不安と期待のバランスを巧みに描いています。

あらすじ

物語は、与太郎という若者が、伯父からの縁談を持ちかけられるところから始まります。与太郎はこの縁談に目がくらみ、資産家の娘との結婚を決意します。彼女は美人で、家柄にも申し分ありませんが、ただ一つの欠点、それは、「夜になると首が伸びる」というのです。「もし、そういうことが本当なら、どうせ寝ているから大丈夫」と楽観的な与太郎は、縁談を受けることにします。

こうして結婚が決まり、ついに初夜を迎える日がやってきました。しかし、与太郎は初夜の夜、果たして首は本当に伸びるのだろうかと不安になり、なかなか眠りにつけません。深夜の時が過ぎ、やがて丑三つ時、ついにその瞬間が訪れます。隣で眠る妻の脇に身を寄せ、与太郎は恐る恐る目を開けます。すると、言い伝え通り、妻の首がゆっくりと伸びていくのを見てしまったのです。驚愕した与太郎は大声で叫び、すぐに家を飛び出しました。

抗議の道

与太郎は自分の伯父の元へ走り、異常事態を訴えます。しかし、伯父は冷静に、「事前に説明したことだろう」と叱責し、少し落ち着くように帰宅するように促しました。その際、与太郎は心を文字通り平らにすることができず、夏の間だけでも養子の契約を解除してほしいと懇願します。伯父がなぜかと問いかけると与太郎は、
「首の出入りに蚊が入って困る」
と明言します。この一言から、彼の恐れがどのようにユーモラスに表現されるのかが伺えます。

バリエーション

この話は多くの演者によってアレンジされてきました。例えば、4代目柳家小さんは、「実家に帰る」と言う男に対し、伯父が「母親が孫の顔が見られると喜び、首を長くして待っている」と言ったところで、「それじゃあ実家にも帰れねえ」という落ちを加えました。また、3代目桂三木助のバージョンでは、男は相手が怒っているのではないかと心配すると、伯父は「怒ってはいない、きっとお前を待っている」と返し、男が「どうやって待っているのか？」と問い返すと「首を長くして待っている」と続ける形で笑いを誘います。

まとめ

『ろくろ首』は、偶然や日常の中に潜むドタバタ劇を見事に描いた落語であり、人物の心理描写やコミカルな展開が魅力です。この作品を通して、古典落語の持つ深いユーモアと、観客を引き込むストーリーテリングの技術を感じることができます。

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