わかやまけん

わかやまけん（本名：若山 憲）は、1930年1月29日に岐阜県で生まれ、2015年7月17日に85歳で亡くなった日本の絵本作家です。もともとグラフィックデザイナーとして活動していましたが、子どもたちの世界を描く絵本の世界に強く惹かれ、絵本作家への道を歩みました。その作品、特に「こぐまちゃんえほんシリーズ」は累計1000万部近い大ベストセラーとなり、世代を超えて今なお多くの読者に愛されています。

経歴と絵本作家への道

1930年、岐阜市に生まれたわかやまけんは、15歳の頃に雑誌で見た童画との出会いをきっかけに絵の道を志します。デザイン事務所で働きながら童画への思いを深め、24歳で上京。1957年頃から月刊誌の挿絵や紙芝居を手がけるようになります。その後、こぐま社の創立者となる編集者、佐藤英和と出会ったことが、絵本作家としての活動を本格化させる契機となりました。1968年には、絵と文を自身で手掛けた初の創作絵本『きつねやまのよめいり』を刊行。この作品は第16回サンケイ児童出版文化賞を受賞し、絵本作家としての評価を確立しました。

代表作「こぐまちゃんえほんシリーズ」

1970年に始まった「こぐまちゃんえほんシリーズ」は、わかやまけんの最も知られた代表作です。このシリーズは、2、3歳児の日常的な生活や遊びを、シンプルかつ温かみのある絵とリズミカルな言葉で描いています。作品づくりにあたっては、当時幼かった自身の長男の姿や、近所の子どもたちの遊びを熱心に観察し、子どもたちの目線に立って描くことを大切にしました。また、共同制作者や編集者と共に、子どもたちの世界を体験する取材も行いました。このシリーズは絶大な人気を博し、2017年時点で累計約954万部を発行。中でも『しろくまちゃんのほっとけーき』は単独で293万部を超えるミリオンセラーとなり、多くの親子に読み継がれています。

教育・社会貢献

わかやまけんは、創作活動だけでなく、絵本文化の振興にも尽力しました。絵本研究雑誌『月刊絵本』の編集委員を務め、絵本に関する執筆も行いました。また、絵本創作講座や専門学校の講師として長年後進の指導にあたりました。さらに、地元図書館の設立運動にも関わるなど、地域文化への貢献も行っています。

晩年とレガシー

2001年に持病のため創作活動を終え、2015年に85歳で亡くなりました。本人の意思により、その死はしばらく非公表でしたが、2017年に明らかとなりました。没後もわかやまけんの作品は読み継がれており、2021年から2023年にかけて、自身初となる大規模な回顧展「こぐまちゃんとしろくまちゃん 絵本作家・わかやまけんの世界」が全国各地で開催され、改めてその功績が称えられました。

主な受賞と作品

主な受賞には、『きつねやまのよめいり』でのサンケイ児童出版文化賞、『おばけのどろんどろんとぴかぴかおばけ』での絵本にっぽん賞があります。代表作である「こぐまちゃん」シリーズのほか、「たっちゃんさっちゃん」シリーズ、「おばけのどろんどろん」シリーズなど、子どもたちの心に寄り添う温かい作品を数多く生み出しました。わかやまけんが生み出した絵本の世界は、これからも多くの子どもたちに読み継がれていくことでしょう。

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