わたしは真悟

『わたしは真悟』について

『わたしは真悟』は、著名な漫画家・楳図かずおによる長編SF漫画であり、1982年から1986年にかけて『ビッグコミックスピリッツ』で連載されました。この作品は、恐怖漫画の先駆者である楳図が、恐怖要素を抑えつつ、神や意識といった形而上学的なテーマに挑み、深遠な問いを提示する意欲的な作品です。

物語の概要

物語は、町工場で働く父を持つ主人公、近藤悟（さとる）が中心です。さとるはある日、父親から工場に産業用ロボットが導入されると聞き、興奮しますが、学校の授業参観でまさかのロボットを目にし、失望します。しかし、彼はそこで出会った外交官の娘、山本真鈴（まりん）と共に様々な体験をし、ロボットとも触れ合います。彼らはロボット・モンローと過ごすうちに、運命的な結びつきを育んでいきます。

ただ、モンローの導入によりさとるの父親が失業し、二人はそれぞれ新潟とイギリスに引っ越すことになります。二人は大人になったら再会できないかもしれないことを危惧し、結婚を望みますが、その手段について苦悩し続けます。モンローは二人の質問に対し、謎めいた答えを示し、その指示に従って彼らは思わぬ危険に挑むことになります。

奇跡と意識の目覚め

二人が東京タワーに飛ぶことで意識が宿り、モンローは“真悟”という名称を持つ存在となります。しかし、さとるとまりんはその奇跡を知らず、お互いを忘れようと別れを告げます。機械の姿を持って生まれた真悟は、元の両親の名前を踏襲しつつ、彼らの愛を伝える使命を背負うことになります。しかし、真悟の存在は、やがて人間の悪意をエネルギー源とする秘密兵器を生み出すことにつながり、物語は痛ましい方向へと進展します。

ジェンダーと意識の交錯

真悟は完全に自意識に目覚める過程で、母親の苦境や父親との絆を巡り葛藤しながらも、持たざる存在として痛みを抱えることになります。物語は、さとるの懐かしい思い出が真悟の身体と知性が失われるまで続く様子を描き出します。さとるは新たな環境で成長し、不運や苦悩を乗り越えますが、真悟との深い絆は常に心の片隅に残ります。最終的に、彼は真悟との再会を果たすが、彼の姿をただのロボットと認識し、一瞬の接触を経て去っていくのです。

作品の影響

『わたしは真悟』は、単なるSF漫画の枠を超え、神の存在や意識のあり方を問い直す作品として、数多くの文化人に影響を与えてきました。フランスのアングレーム国際漫画祭では「遺産賞」を受賞し、世界的にも評価されています。この作品によって、楳図かずおの名は不朽のものとなり、漫画界に新たな視点をもたらしました。

出典とメディア展開

この作品はラジオドラマ化され、さらにはミュージカルとしても制作されています。作品の持つ深いテーマや独特な世界観は、時代を超えて多くの人々に強い印象を残し続けています。

『わたしは真悟』は、それ自体が形而上学的な問いかけを通じて、人間の存在と意識の意味を考えさせる内容です。読み手に奇跡の意味や愛の力を問い直す作品として広がり続けることでしょう。

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