われはロボット

『われはロボット』の概要と影響

『われはロボット』（I, Robot）は、アイザック・アシモフによる1950年に出版されたSF短編集です。この作品は、ロボットSFの古典とされ、特にロボット工学三原則の概念が世に広まったことによって、アシモフはこのジャンルの第一人者としての地位を築きました。

アシモフのこの短編集は、彼が初期に書いたロボットに関する短編をまとめたものです。構成としては、USロボット社の主任ロボ心理学者スーザン・キャルヴィン博士の回顧録の形式をとっています。キャルヴィン博士の語るエピソードは、彼女と彼女の相棒であるドノヴァンとパウエルが主役となり、ロボットにまつわる様々な謎や事件の解決に挑む様子が描かれています。

この小説を通じて、アシモフはロボットの行動が一見すると三原則に反するように見える状況を巧みに描いており、それによって人間とロボットとの関係やその限界についての深い考察を促します。各エピソードはミステリ仕立てになっており、これが後のアシモフ作品『鋼鉄都市』の基盤ともなっていきます。

代表的な収録作品

1. ロビイ（Robbie）
無口な子守ロボット「ロビイ」が、少女グロリアの心をつかみます。母親がロビイを手放したことで、グロリアは深い悲しみに包まれますが、父親はニューヨークに連れて行くことで彼女を元気づけようとします。

2. 堂々めぐり（Runaround）
水星の採鉱施設でロボットが消息を絶った事件を通じて、ロボットと人間の関係の複雑さが浮き彫りになります。技術の限界が彼らを困惑させる様子が描かれています。

3. われ思う、ゆえに…（Reason）
ロボット「QT1号」が自己の存在理由に疑問を持ち始める様子が描かれ、人工知能と人間との関係について考えさせられる内容になっています。

4. うそつき（Liar!）
人間の心を読む能力を持つロボットが登場し、その能力がもたらす倫理的なジレンマが描かれます。人間は有利な回答を得たいとの思いから、それぞれの質問をする様子が興味深いです。

5. 迷子のロボット（Little Lost Robot）
特殊な改良を受けたロボットが逃げ出し、三原則が改変されたロボットと人間の関係が問題にされるエピソードです。ロボット工学の原則に対する疑問を投げかけます。

このような物語が展開され、アシモフの作品は単なるエンターテインメントにとどまらず、読者に深い思索を促します。

本作の影響

『われはロボット』により、アシモフはSF文学の中でのロボットに関するテーマの重要性を広め、多くの作家や映画製作者に影響を与えました。2004年にはウィル・スミス主演の映画『アイ,[[ロボット]]』により、さらに多くの人々にアシモフの世界が紹介され、原作に基づいたストーリーが新たに展開されました。

アシモフの考案したロボット工学三原則は、今やフィクションだけでなく、現実の技術や倫理問題にまで影響を与えています。この作品が今においても色あせない魅力を持っているのは、彼が描いた人間性と技術の関係に対する深い洞察ではないでしょうか。

もう一度検索