アイガー北壁

映画『アイガー北壁』：歴史に刻まれた挑戦と悲劇

映画『アイガー北壁』（原題：Nordwand）は、1936年、ベルリンオリンピック直前の夏を舞台に、アイガー北壁初登攀を目指す登山家たちの壮絶な挑戦を描いた作品です。この映画は、実際に起きた出来事を基にしており、当時の社会情勢や登山家たちの人間ドラマ、そして悲劇的な結末が深く描かれています。

物語の背景

1936年、ナチス政権は国威発揚のため、標高3970mのアイガー北壁のドイツ人による初登攀を強く望んでいました。成功者にはオリンピック金メダルが授与されるという条件も提示され、世間の注目は一気にアイガー北壁へと集まります。

当時、著名な登山家であったドイツ山岳猟兵のトニー・クルツとアンディ・ヒンターシュトイサーは、その盛り上がりに戸惑いながらも、”殺人の壁”と恐れられるアイガー北壁への挑戦を決意します。彼らの幼馴染であり、かつて恋人同士だったルイーゼ・フェルナーは、ベルリン新聞社の記者として、この世紀の瞬間に立ち会うことになります。

登攀開始

1936年7月18日、絶好のコンディションの中、トニーとアンディは登攀を開始。彼らの後を追うように、オーストリア隊のヴィリー・アンゲラーとエディ・ライナーも登り始めます。しかし、間隔を空けずに登っていたために、ヴィリーが落石に遭い重傷を負ってしまいます。4人は高度3100m地点で1回目のビバークをすることになります。

彼らの驚くべき快進撃は、山麓の宿泊客たちの期待を高め、明日にも初登攀が達成されるのではないかという希望を抱かせます。しかし、翌日には、ヴィリーの容態が悪化。高度3350mに達したものの、登攀は不可能と判断せざるを得なくなります。4人は、ヴィリーをザイルで確保しながら下山を開始することになります。

天候悪化と悲劇

7月20日、天候が急激に悪化し、3回目のビバークを余儀なくされます。そして7月21日、下山途中の彼らに雪崩が襲いかかります。エディは岩壁に頭を強く打ち付けて即死。アンディとヴィリーは宙吊りの状態で気を失ってしまいます。朦朧とする意識の中、アンディはトニーを守るために自らザイルを切断し、ヴィリーと共に麓へ落下していきました。

一人残されたトニーは、ザイルも尽き、体力も限界を迎え動けなくなってしまいます。救助隊が駆け付けますが、悪天候のために近づくことができません。7月22日、ようやく天候が回復し、救出が本格化しますが、カラビナにザイルの結び目が引っ掛かっており、トニーは降りることができません。それを解く力ももはや残されておらず、救助隊の目前で「寒い...」という言葉を残し、力尽きてしまいます。

初登攀の達成

アイガー北壁の初登攀は、この悲劇から2年後の1938年、アンデルル・ヘックマイヤーとルードヴィッヒ・フェルクのドイツ隊、ハインリッヒ・ハラーとフリッツ・カスパレクのオーストリア隊によって達成されました。

キャスト

映画には、トニー・クルツ役のベンノ・フュルマン、アンディ・ヒンターシュトイサー役のフロリアン・ルカ、ルイーゼ・フェルナー役のヨハンナ・ヴォカレクなど、実力派俳優が出演しています。

映像ソフト化

日本では、DVDが2010年9月21日に発売されました。

関連情報

映画『アイガー北壁』は、山岳映画の傑作として、今も多くの人々に感動を与えています。この作品は、人間の勇気と限界、そして自然の脅威をリアルに描き出しており、観る者に深い印象を与えます。

関連情報として、以下のリンクもご参照ください。

アイガー北壁 - allcinema
アイガー北壁 - KINENOTE
Nordwand - オールムービー（英語）
Nordwand - IMDb（英語）

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