アイデン&ティティ

『アイデン&ティティ』の概要

『アイデン&ティティ』は、1992年から2004年にかけて刊行されたみうらじゅんの自伝的漫画シリーズです。この作品は、同名の日本映画としても知られており、特に2003年に公開された映画版は、多くの評価を受けました。物語は、1980年代後半から1990年代にかけての日本のバンドブームを背景に展開します。漫画と映画では、みうらじゅんが所属していたバンド「大島渚」の一部映像も登場し、彼の音楽への情熱が色濃く表現されています。特にボブ・ディランへのオマージュが随所に見られ、主題歌に使用されている「ライク・ア・ローリング・ストーン」や劇中に散りばめられたディランの楽曲やレコードのジャケットがその象徴です。映画では、ムーンライダーズの白井良明などのミュージシャンが音楽を担当しており、音楽に対するみうらの強いこだわりが感じられます。実際、みうらはボブ・ディランに脚本を英訳して読んでもらい、承諾を得た上で作品に楽曲を使用しています。

あらすじ

物語の中心となるのは、バンド・ブームに乗ってメジャーデビューを果たしたSPEED WAYというバンドです。彼らはデビュー曲がある程度の成功を収め、ファンも増えますが、ギタリストの中島は本物のロックを追求して葛藤します。そんな中、中島の住む高円寺のアパートに、ボブ・ディランのような風貌を持つ謎のハーモニカ奏者が現れます。この存在は中島だけに見えるもので、物語の中で重要な役割を果たします。バンドブームが終息する中、ある出来事をきっかけに中島は自ら歌う決意を固め、音楽との新たな関係を築くことになります。

登場人物

物語には多くのキャラクターが登場します。

• - 中島: SPEEDWAYのギターを担当する主人公。普段は優しく真面目ですが、自己の個性に強いこだわりを持ち、頻繁に悩みを抱えています。音楽と自分自身の理想とのギャップに苦しむ姿を描かれ、ボブ・ディランの幻影が彼に助言を与えます。
• - ボブ・ディラン: 中島が悩んでいるときに現れる幻影。音楽の助言を行い、彼の心の支えとなります。
• - 中島の彼女: 中島を支え続けている美しい恋人。彼女は中島の音楽を愛しており、生活面でも彼をサポートします。
• - 岩本: SPEEDWAYのライバルバンドのボーカルで、早々に成功を収めた彼は、後に癌に侵されていることが明らかになります。
• - ジョニー: SPEEDWAYのボーカルで、ある出来事によりバンドを脱退することになります。
• - トシ: SPEEDWAYのベースを務めるキャラクターで、バンドの将来に少しの不安を抱えています。

書誌情報

『アイデン&ティティ』は1992年に青林堂から刊行され、その後も続編として『マリッジ』や『アイデン&ティティ 24歳/27歳』などが発表されました。また、2004年には映画化され、多くのキャストが出演しました。映画では田口トモロヲが監督を務め、宮藤官九郎が脚本を担当しました。ストーリーを通じて、音楽への情熱と個人の成長がテーマとなっており、多くの視聴者に感動を与えました。特に、ボブ・ディランの楽曲を核にしたストーリー展開は、音楽ファンにとっても特別な意味を持つ作品となっています。

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