アイルランド市民軍

アイルランド市民軍（ICA）とは

アイルランド市民軍（ICA）は、20世紀初頭のアイルランドで結成された民兵組織です。正式名称はアイルランド語で「Arm Cathartha na hÉireann」、英語では「The Irish Citizen Army」といい、略称はICAです。労働組合の活動を保護する目的で設立されましたが、後にアイルランド独立運動における重要な役割を担いました。

設立の背景：ダブリン・ロックアウト

1913年、アイルランド運送・一般労働組合 (ITGWU) が主導した大規模なストライキ、ダブリン・ロックアウトが発生しました。このストライキはダブリンの経済を麻痺させ、ストライキ参加者と警察との間で激しい衝突を引き起こしました。労働運動家のジェームズ・ラーキンは、労働者を警察の暴力から守るために、民兵組織の必要性を痛感し、同志と共にICAを結成しました。

ICAの結成と初期の活動

1913年11月23日、ジェームズ・ラーキン、ジェームズ・コノリー、ジャック・ホワイトらの手によって、アイルランド市民軍が正式に結成されました。ICAは労働者のデモを警察から守ることを主な目的としていましたが、次第に社会主義的な思想を色濃く反映するようになります。1914年には、鋤と星をあしらった独自の旗を採用し、組織のアイデンティティを確立しました。

イースター蜂起への参加

1916年、ICAはアイルランドの独立を目指したイースター蜂起に参加しました。ジェームズ・コノリーの指揮のもと、ICAの隊員たちはダブリン中央郵便局 (GPO) などを占拠し、イギリス軍との戦闘を繰り広げました。しかし、蜂起は最終的に鎮圧され、コノリーをはじめとする指導者たちは処刑されました。

独立戦争と内戦

イースター蜂起後、ICAは指導者を失い、組織としての活動は停滞しました。アイルランド独立戦争中は、アイルランド共和軍 (IRA) への物資支援を主に行い、直接的な戦闘には関与しませんでした。しかし、1922年に勃発したアイルランド内戦では、「中立」を宣言したことがさらなる隊員の離脱を招きました。

ICAの再編と終焉

1934年、共和党議会によってICAの再建が試みられましたが、イデオロギー論争により共和党議会が崩壊すると、ICAも再び解散しました。その後は、イースター蜂起の退役軍人たちの集まりとして存続しましたが、かつての勢いを失いました。

ICAの遺産

アイルランド市民軍は、短命ながらもアイルランドの労働運動と独立運動に大きな影響を与えました。労働者の権利保護を訴え、社会主義的な思想を掲げたICAの活動は、後のアイルランド社会に深く根を下ろしました。また、イースター蜂起における勇敢な戦いは、アイルランドの人々に独立への希望を与え、その後の独立運動を大きく後押ししました。

ICAの歴史は、アイルランドの激動の時代を象徴するものであり、その精神は今もなお、多くの人々に受け継がれています。

主要人物

ジェームズ・ラーキン
ジェームズ・コノリー
ジャック・ホワイト
ショーン・オケーシー
コンスタンツ・マルキエビッチ

参考文献

Anderson, W.K., James Connolly and the Irish Left (Dublin 1994). ISBN 0-7165-2522-4.
Fox, R.M., The History of the Irish Citizen Army (Dublin 1943)
Greaves, C. Desmond, Life and Times of James Connolly, (London 1972)

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