アイ・アム・ア・ロック

アイ・アム・ア・ロック（I Am a Rock）

「アイ・アム・ア・ロック」（I Am a Rock）は、アメリカの音楽デュオ、サイモン＆ガーファンクルが1966年に発表したシングル曲です。彼らの代表曲の一つとして広く認知されており、自己の内面を閉ざし、外界からの干渉や傷つくことを拒むさまを、揺るぎない「岩」にたとえて歌い上げた、内省的で孤独感を湛えた楽曲です。

この楽曲のルーツは、サイモン＆ガーファンクルとしての活動が一時中断していた時期にあります。メンバーのポール・サイモンは1965年、イギリスへと渡りソロ活動を展開していました。その成果としてリリースされたソロアルバム『ポール・サイモン・ソングブック』に、「アイ・アム・ア・ロック」は初めて収録されました。

イギリス滞在中、ポール・サイモンはこの楽曲を積極的に披露しています。特に印象的なエピソードとして、アルバム発売前の1965年7月23日に、当時の人気音楽番組ITV『レディ・ステディ・ゴー』に生出演した際、この曲を演奏したことが挙げられます。番組側からは演奏時間の短縮を求められましたが、彼は自身の表現を貫き、フル・ヴァージョンで歌い切ったと伝えられています。イギリスではソロシングルとしてもリリースされましたが、残念ながら当時のチャートに名を連ねるまでには至りませんでした。

その後、ポール・サイモンはアメリカへ帰国し、アート・ガーファンクルとのデュオ活動を再開します。彼らは「アイ・アム・ア・ロック」を再び取り上げ、サイモン＆ガーファンクルとして再録音しました。この新たなバージョンは、1966年初頭に発表された彼らのセカンドアルバム『サウンド・オブ・サイレンス』に収められました。アルバム収録曲として発表された後、シングルカットされると、この再録音バージョンは大きな成功を収めました。

「アイ・アム・ア・ロック」は、ビルボードの全米シングルチャートでトップ10入りを果たし、サイモン＆ガーファンクルにとって3作目となる全米トップ10ヒットとなりました。この成功は、前年の「サウンド・オブ・サイレンス」のヒットに続くものであり、フォークデュオからフォークロックへと音楽性を広げつつあった彼らの地位を確固たるものとする上で、非常に重要な役割を果たしました。

このシングルのB面には、「雨に負けぬ花」（Flowers Never Bend with the Rainfall）が収録されました。この楽曲もまた、『ポール・サイモン・ソングブック』に収められていたポール・サイモンのソロ曲のセルフカバーです。サイモン＆ガーファンクル版は1966年12月頃に録音されたとされていますが、同年初頭にリリースされたアルバム『サウンド・オブ・サイレンス』には収録されず、このシングルが初めて公式に発表された場となりました。その後、「雨に負けぬ花」は同年後半に発表されたアルバム『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』に収録されることになります。B面曲でありながら、こちらもまた彼らの代表的な楽曲の一つとして知られています。

「アイ・アム・ア・ロック」が表現する、孤独や自己防衛といったテーマは、多くの人々に普遍的な共感を呼び起こしました。そのメロディと歌詞は時代を超えて支持され続けており、発表以来、数多くのアーティストによってカバーされています。例えば、同時代のホリーズやグラス・ルーツ、日本のフォークグループジローズ、オルタナティヴロックバンドのレッドハウスペインターズなど、国内外の多様なジャンルのアーティストがそれぞれの解釈でこの楽曲を歌い継いでおり、その enduring popularity を証明しています。

自己を隔絶し、傷つくことから身を守る「岩」としての姿を描きながらも、その裏に隠された繊細な感情が聴く者の心を捉える「アイ・アム・ア・ロック」は、サイモン＆ガーファンクルの初期のサウンドと叙情性を象徴する一曲と言えるでしょう。

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