パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム

サイモン&ガーファンクルが1966年10月にリリースした3枚目のアルバム『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』は、彼らのキャリアにおいて重要な位置を占める作品です。アルバムタイトルは、イギリスの民謡「スカボロー・フェア」の歌詞から取られており、この民謡をアレンジした楽曲「スカボロー・フェア/詠唱」がアルバムの幕開けを飾ります。この曲は、ポール・サイモンが自身のソロアルバム『ポール・サイモン・ソングブック』で発表した楽曲「ザ・サイド・オブ・ア・ヒル」の一部を取り込むことで、新たな魅力を生み出しています。

アルバムには、さらに『ポール・サイモン・ソングブック』からのセルフカバーも3曲収録されています。「パターン」、「雨に負けぬ歌」、「簡単で散漫な演説」といった楽曲は、ソロ作品で培われたサイモンのソングライティングの深みを感じさせる選曲と言えるでしょう。

特筆すべきは、「7時のニュース/きよしこの夜」という楽曲です。この曲は、ニュース番組のDJのアナウンスをオーバーダビングしたユニークな構成になっており、当時のアメリカ社会の状況を反映した歌詞が聴く者の心に響きます。公民権法の動向、レニー・ブルースの訃報、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアのデモ行進、リチャード・スペックの裁判、そしてベトナム戦争反対運動といった、1960年代アメリカを揺るがした出来事が、この楽曲に凝縮されています。

このアルバムは、全米アルバムチャートで4位を記録し、サイモン&ガーファンクルの作品としては初めてトップ10入りを果たしました。これは、彼らの音楽が広く大衆に受け入れられたことを示す大きな成果と言えます。また、『ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500』では202位にランクインしており、その音楽史における重要な位置付けが改めて示されています。

アルバム収録楽曲は、ポール・サイモンが中心となって作詞作曲を手掛けており、彼の才能が存分に発揮されています。アレンジメントにおいては、アート・ガーファンクルの貢献も大きく、二人のハーモニーと、繊細かつ力強い音楽性は、このアルバム全体を彩っています。

さらに、このアルバムに収録されている楽曲は、他のアーティストたちによって数多くカバーされています。「59番街橋の歌 (フィーリン・グルーヴィー)」は、ハーパース・ビザールによってシングルカットされ全米13位を記録、その後もマイク・ブルームフィールド&アル・クーパーやピチカート・ファイヴなど、様々なアーティストがカバーするなど、時代を超えて愛され続けています。「夢の中の世界」もジョーン・バエズによってカバーされるなど、その魅力は多くのミュージシャンに影響を与え続けていると言えるでしょう。

『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』は、時代を反映した歌詞、洗練された音楽性、そして多くのアーティストに影響を与え続けた楽曲の数々によって、サイモン&ガーファンクルの代表作として、そして1960年代を代表する名盤として、音楽史にその名を刻んでいます。アルバム全体から漂う独特の雰囲気、そしてそれぞれの楽曲に込められたメッセージは、現代においてもなお、聴く者の心に深く響くことでしょう。

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