アイ・キャント・エクスプレイン

ザ・フー「アイ・キャント・エクスプレイン」徹底解説

「アイ・キャント・エクスプレイン」（I Can't Explain）は、ザ・フーがザ・ハイ・ナンバーズから改名後、再デビューを飾った重要なシングルです。ピート・タウンゼントが作詞・作曲を手掛け、その初期の音楽性を象徴する楽曲として、今もなお多くのファンに愛されています。

誕生の背景

この楽曲は、当時隆盛を誇っていたキンクスのサウンドから強い影響を受けています。ロジャー・ダルトリー自身も、キンクスの音楽性を彷彿とさせる点から、レコーディングに際して少しためらいがあったと語っています。しかし、その類似性こそが、この曲の魅力の一つとも言えるでしょう。

レコーディングには、ジ・アイヴィー・リーグがバックコーラスとして参加し、さらに、後の Led Zeppelin のギタリストとなるジミー・ペイジもリズムギターとして参加しています。プロデューサーのシェル・タルミーによれば、当初、タウンゼントがリードギター、ペイジがリズムギターを担当する予定でしたが、タルミーはタウンゼントをリズムギタリストとして捉えていたため、ペイジをバックアップとして待機させていたとのことです。また、シングルのB面に収録された「ボールド・ヘッデッド・ウーマン」では、ペイジがファズギターを披露しています。

興味深いエピソードとして、1964年にアメリカで先行発売されたシングルの初回プレス盤は、タイトルが「Can't Explain」と誤記されていました。その後、すぐに正しいタイトルに修正されています。

反響と評価

「アイ・キャント・エクスプレイン」は、全英シングルチャートで13週に渡りチャートインし、最高8位を記録するヒットとなりました。アメリカのBillboard Hot 100でもチャートインを果たしましたが、最高93位に留まっています。しかし、その音楽的な影響力は非常に大きく、ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500では380位にランクイン。また、ピッチフォーク・メディアが2006年に選出した「1960年代の偉大な200曲」では9位にランクインするなど、高い評価を受けています。

多彩なカバーバージョン

「アイ・キャント・エクスプレイン」は、数多くのアーティストによってカバーされています。中でも特に有名なのは、スコーピオンズによるカバーでしょう。

スコーピオンズによるカバー

スコーピオンズは、オムニバス・アルバム『Stairway to Heaven/Highway to Hell』（1989年）に、ブルース・フェアバーンのプロデュースによる「アイ・キャント・エクスプレイン」のカバーを提供しました。このカバーは、スコーピオンズのベスト・アルバム『蠍伝説〜スコーピオンズ・ベスト』（1989年）や、日本盤EP『ウィンド・オブ・チェンジ』（1991年）にも収録されています。シングルとしてもリリースされており、アメリカ盤のジャケットでは原題と同様「I Can't Explain」と表記されているのに対し、ヨーロッパ盤のジャケットでは「Can't Explain」と表記されているという違いがあります。ヨーロッパでは変形ディスク仕様のピクチャー・レコードも発売されました。スコーピオンズのバージョンは、アメリカでは『ビルボード』のメインストリーム・ロック・チャートで5位に達しています。

その他のカバーアーティスト

デヴィッド・ボウイ - アルバム『ピンナップス』（1973年）
イヴォンヌ・エリマン - アルバム『フード・オブ・ラヴ』（1973年）
スナッフ - EP『Flibbidydibbidydob』（1990年）
イギー・ポップ - トリビュート・アルバム『Who Are You: An All-Star Tribute to The Who』（2012年）

これらのカバーバージョンからも、「アイ・キャント・エクスプレイン」が時代を超えて愛され続けていることがわかります。

「アイ・キャント・エクスプレイン」は、ザ・フーの初期の勢いを象徴するだけでなく、ロック音楽史においても重要な位置を占める楽曲です。そのシンプルながらも力強いサウンドは、多くのミュージシャンに影響を与え、今もなお、新たなファンを獲得し続けています。

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