アウグスティヌス神義論

アウグスティヌス神義論とは

アウグスティヌス神義論は、4世紀から5世紀にかけて活躍した神学者アウグスティヌスに基づく神義論の一種で、神の全能性や善性に関する理論です。特に、この論理は「悪の証拠的問題」と呼ばれる課題に対し、神が全知全能でありながら、なぜ悪が存在するのかを説明しようとする試みとなっています。アウグスティヌスは、神の本質が完全な善であることを前提にしつつ、この世に悪が存在する理由を論じました。

悪の存在と神の性質

アウグスティヌス神義論では、悪は自主的な存在ではないとされ、神が創造した善の欠如や人間の自由意志の乱用によるものと考えられています。彼は、神はこの世界を無から創造したとし、悪は人間の原罪という形で現れる結果であると説明しました。また、アウグスティヌスは自由意志を重視し、人間が信仰によって導かれることによって悪を克服できるとおもっていました。

アウグスティヌスの影響

アウグスティヌスの考えは、後の神学者にも強い影響を与えました。トマス・アクィナスは彼の神義論を継承しつつ、神が善であり悪を引き起こすことはなく、善の存在のための条件として悪が存在することを強調しました。また、カルヴァンもアウグスティヌスの自由意志に関する見解を支持し、神の恩寵が人間の堕落を救うエッセンスであると主張しました。

批判と議論

一方で、アウグスティヌス神義論には批判も存在します。例えば、フォルトゥナトゥスは、神が悪に関与していないというアウグスティヌスの立場を疑問視しました。また、18世紀の神学者ザッカリーアは、アウグスティヌスが人間の苦しみについて十分に考慮していないと批判しました。ジョン・ヒックは、人間の成長において悪が必要であるという新たな観点から、神義論を展開しました。

自由意志弁護論とその影響

アウグスティヌスの考えはさらに発展し、アルヴィン・プランティンガの自由意志弁護論が提唱されました。この理論は、悪の存在を自由意志の結果として正当化し、神が悪を創造したのではなく、悪の存在は人間の選択によるものだとします。しかし、この観点も依然として批判の的となり、科学の視点からアウグスティヌスの主張が否定されることがあります。

結論

アウグスティヌス神義論は、神の全能性と悪の存在を調和させようとする重要な理論です。悪の存在がどのようにして神の性質と矛盾しないのかを説明しようとした彼の思索は、多くの後続の神学者や哲学者に影響を与え、神義論の歴史の中で重要な役割を果たしてきました。現在に至るまで、この神義論はさまざまな議論を呼び起こし続けています。

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