アウストラロピテクス・アフリカヌス

アウストラロピテクス・アフリカヌス（Australopithecus africanus）

アウストラロピテクス・アフリカヌスは、200万～300万年前の鮮新世に生息していた初期の猿人です。アウストラロピテクス・アファレンシスと同様に、きゃしゃな体格をしており、かつては現代人類の直接の祖先と考えられていました。

発見の歴史

A・アフリカヌスの化石は、南アフリカの4か所でのみ発見されています。その中でも特に重要なのは、以下の発見です。

タウン・チャイルド (1924年)：オーストラリアの解剖学者レイモンド・ダートが、タウンで発見された頭蓋骨の断片を調査し、アウストラロピテクス・アフリカヌスと命名しました。これは、ヒト科の化石に「アウストラロピテクス」という名前が付けられた最初の事例です。ダートは、この化石が猿人と人間の中間種であると主張しましたが、当時の学会では受け入れられませんでした。
ミセス・プレス (1947年)：ロバート・ブルームとジョン・ロビンソンが、スタークフォンテイン石灰採集場で発見した中年女性の頭蓋骨（Sts 5）です。当初はプレシアンスロプス・トランスヴァーレンシスと分類されましたが、後にA・アフリカヌスに分類し直されました。この化石は、人類に近い特徴を示す重要な証拠となりました。

形態的特徴

A・アフリカヌスは、以下の特徴を持っていました。

二足歩行：アウストラロピテクス・アファレンシスと同様に、二足歩行をしていました。大後頭孔の位置から直立二足歩行をしていたことがわかります。腕の長さは脚よりもわずかに長く、チンパンジーに似た特徴も残っています。
頭蓋骨：「ミセス・プレス」などの頭蓋骨に見られるように、頭部の特徴は現代人に近い部分があります。脳容量は400～500mlで、類人猿並みでした。
手：指は曲がりやすく、木登りにも適していました。
骨盤：アウストラロピテクス・アファレンシスよりも、わずかに二足歩行に適した形状をしていました。
* 性的二形：腰椎に現代人と同じように性的二形が見られました。これは、女性が妊娠中に二足歩行をするのに適応した結果と考えられています。

進化上の位置づけ

一部の研究者は、A・アフリカヌスから、より現代人に近いパラントロプス属が進化したと考えています。パラントロプス・ロブストスは、A・アフリカヌスから進化したと考えられている猿人の一種です。ロブストスの頭蓋はゴリラに似ており、A・アフリカヌス以上に強く噛むことができました。一方、A・アフリカヌスの頭蓋はチンパンジーに似ています。

チャールズ・ダーウィンは人類の発祥の地はアフリカだと主張しましたが、20世紀前半には大部分の人類学者や科学者はアジア起源だと主張していました。しかし、東アフリカのラエトリでヒト科の足跡の化石が見つかったことから、マリー・リーキー (Mary Leakey) らリーキー家出身の科学者は、アフリカ起源説に賛成しました。

まとめ

アウストラロピテクス・アフリカヌスは、人類の進化の過程において重要な位置を占める猿人です。南アフリカでの発見は、人類の起源を解明する上で大きな貢献を果たしました。その形態的な特徴は、二足歩行への適応と、より現代的な人類への進化の過程を示唆しています。

もう一度検索