アウディ・Q8 e-tron

アウディQ8 e-tron：高級EVの進化系

アウディQ8 e-tronは、ドイツの自動車メーカー、アウディが製造・販売する高級電気自動車（EV）です。当初は「e-tron」として発売されましたが、2022年のフェイスリフトを経て現在の名称に変更されました。本記事では、その開発から最新のモデル、そして受賞歴やリコール情報まで、Q8 e-tronの全てを詳細に解説します。

開発から発売まで

Q8 e-tronの開発は2015年、フランクフルトモーターショーにおけるコンセプトモデル「e-tron quattroコンセプト」の発表から始まりました。その後、2017年の上海モーターショーではSUVクーペタイプのコンセプトモデル「e-tron スポーツバック」が公開されました。これらのコンセプトモデルを経て、2018年のジュネーブモーターショーで量産プロトタイプが公開され、同年9月にベルギーのブリュッセル工場で量産が開始されました。同年9月にはロサンゼルスで市販モデルが初公開され、2019年3月にベースモデル、2020年春にはスポーツバックが欧州で発売されました。日本市場への導入は2021年1月です。

デザインと性能

Q8 e-tronは、アウディQ5やQ7と同じMLB Evoプラットフォームを採用し、床下にリチウムイオンバッテリーを搭載しています。全長はQ5とQ7の中間サイズです。既存モデルと共通するボディラインやフロントグリルを継承しながらも、アンダーフロアのフラット化や空力特性に優れたエアロホイールを採用することで、優れた空力性能を実現しています。Cd値はベースモデルで0.28、スポーツバックで0.26と低く抑えられています。さらに、オプションでアウディ初となるバーチャルミラーを選択可能で、装着時にはCd値はそれぞれ0.27、0.25まで向上します。バーチャルミラーの採用は、レクサスESに次いで2例目となります。

インテリアは、アウディ車おなじみのセンターディスプレイとバーチャルコックピットにより構成され、シンプルながらも直感的な操作性を実現しています。既存のアウディ車ユーザーにとっても違和感なく操作できる設計となっています。

高性能モデル：e-tron S/SQ8 e-tron

2020年秋には、ベースモデルとスポーツバックに高性能グレードの「e-tron S」が追加されました。日本市場では2022年4月に発売開始されました。フェイスリフト後は「SQ8 e-tron」に名称変更されています。e-tron S/SQ8 e-tronは、通常モデルに比べてリヤモーターが1基追加され、フロント1基、リヤ2基の3モーター構成となります。これにより、最高出力は370kW（503ps）、最大トルクは99.2kg-m（973Nm）を発揮し、ブーストモード使用時には0-100km/h加速4.5秒という優れた加速性能を実現しています。エクステリアには専用バンパーやアルミルックミラーハウジング、専用アルミホイールなどが装備され、オプションとしてデジタルマトリクスLEDヘッドライトも用意されています。

2022年フェイスリフト

2022年11月には、フェイスリフトが実施され、車名が「e-tron」から「Q8 e-tron」に変更されました（スポーツバックは「Q8 スポーツバック e-tron」）。同時にSモデルは「SQ8 e-tron」に名称変更されました。日本市場では2023年3月に発表されました。フェイスリフトでは、エネルギー密度を向上させた新型バッテリーと効率を改善した新型モーターを搭載することで、航続距離が向上しました。空力性能も改良され、Cd値もさらに低減しています。インテリアにも、環境に配慮したリサイクル素材が採用されるなど、サステナビリティへの取り組みも強化されています。

パワートレイン

Q8 e-tronの動力源は、通常モデルはフロントとリヤにそれぞれ1基のモーターを搭載した構成です。一方、Sモデル/SQ8 e-tronは、フロント1基、リヤ2基の3モーター構成となります。環境負荷低減の観点から、永久磁石を使用しない誘導モーターを採用しています。

受賞歴

Q8 e-tronは、その優れた性能とデザインから高い評価を得ており、数々の賞を受賞しています。代表的な受賞歴としては、2019年のゴールデン・ステアリング・ホイール賞（大型SUV部門1位）、2020年の日本カー・オブ・ザ・イヤー（e-tronスポーツバックがテクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞）などがあります。

リコール情報

2019年6月には、バッテリー火災の可能性があるとして、アメリカ国内で自主回収が行われました。対象車両は約1,644台に及びます。原因はワイヤーハーネスシールの欠陥による水分侵入であり、最悪の場合、火災に繋がる可能性がありました。幸い、火災に至った事例はありませんでしたが、水分侵入によりバッテリー障害ライトが点灯した事例が世界的に5例報告されています。

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