アウディ・R15 TDI

アウディR15 TDI：ル・マン24時間レースを制した革新のレーシングカー

アウディR15 TDIは、ドイツの自動車メーカー、アウディがル・マン24時間耐久レースへの参戦を目的に開発したプロトタイプレーシングカーです。前モデルであるR10 TDIの後継機として、アウディ社内では「第二世代」ディーゼルレーシングカーと位置付けられています。2009年3月19日、その姿が世界に公開されました。

圧倒的な性能と革新的な設計

R15 TDIの心臓部となるのは、新設計のV型10気筒ディーゼルエンジンです。最大出力600ps以上、最大トルク1050Nmという驚異的なパワーを発生させます。前モデルのV12エンジンと比較して、大幅な軽量化とコンパクト化を実現しました。

ボディデザインにおいても、R15 TDIは大きな進化を遂げています。従来のローノーズスタイルから一新されたハイノーズデザインは、風洞実験とコンピュータ流体力学（CFD）解析を駆使して綿密に設計されました。リヤウイングも、空力性能の向上を目指してスワンネック式に変更されています。トランスミッションは、前モデルと同じく5速セミオートマチックを採用しています。

2010年には、さらなる性能向上を追求した改良モデル、R15プラスが投入されました。この年はレギュレーションの変更により、ディーゼルエンジンのリストリクター径が縮小され、出力低下が避けられませんでした。そこでアウディは、パワー不足を補うためフロントノーズの形状変更（分割型）など、空力性能のブラッシュアップに注力しました。

ル・マン24時間レースでの戦績

R15 TDIのル・マン24時間レースデビューは2009年でした。予選では2位を獲得するなど高いポテンシャルを示しましたが、決勝レースではプジョー・908 HDi FAPに敗れ、3位という結果に終わりました。

しかし、2010年、R15プラスはル・マンの歴史に名を刻む偉業を達成します。予選ではプジョー勢にラップタイムで劣勢を強いられるも、決勝レースでは抜群の安定性でライバルを圧倒。見事、1位から3位までを独占するという快挙を成し遂げました。総周回数397周（歴代1位タイ）、総走行距離5410.71km（歴代1位）という驚異的な記録は、R15 TDIの耐久性と信頼性の高さを証明するものです。

2010年をもって、アウディのワークスチームによるR15 TDIのル・マン参戦は終了しました。わずか2年間という短い期間でしたが、R15 TDIはアウディの技術力の高さ、そしてル・マン24時間レースの歴史に大きな足跡を残しました。2011年以降は、クローズドボディの新型レーシングカー、アウディR18 TDIがその役割を引き継ぎました。R15 TDIは、アウディのル・マン挑戦における重要な転換期を象徴する一台と言えるでしょう。

R15 TDIは、革新的な技術と圧倒的な性能で、ル・マン24時間レースの歴史にその名を刻みました。その短い活躍期間にも関わらず、数々のドラマを生み出し、多くのファンを魅了した伝説的なレーシングカーです。その存在は、これからも人々の記憶に深く刻まれ続けることでしょう。

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