プジョー・908

プジョー908は、プジョー・スポールが2011年のル・マン24時間レースを始めとする世界耐久レース参戦を目指し開発したプロトタイプレーシングカーです。

プジョーが誇るディーゼルエンジンの技術を結集したこのマシンは、前車であるプジョー908 HDi FAPの後継として誕生しました。2011年当時のレギュレーションに準拠した、3.7リットルV型8気筒ツインターボディーゼルエンジンを搭載。その圧倒的なパワーと信頼性で、世界最高峰の耐久レースに挑みました。

2011年のル・マン24時間レースでは、3台の908が参戦。結果は、9号車、8号車、7号車の順に2位、3位、4位という素晴らしい成績を収めました。総合優勝こそアウディR18 TDIに譲りましたが、そのパフォーマンスは多くの観客を魅了しました。

ル・マン24時間レースだけでなく、インターコンチネンタル・ル・マン・カップ（ILMC）やアメリカン・ル・マン・シリーズ（ALMS）にも参戦。特にILMCでは、強豪アウディを圧倒する速さを見せつけ、見事年間チャンピオンを獲得しました。プジョー908の戦闘力の高さが証明された瞬間でした。

しかし、プジョー908の活躍は長くは続きませんでした。2012年1月、プジョー本社は、経営上の判断から耐久レース活動からの撤退を発表。それにより、プジョー908の開発、参戦計画は全て中止となりました。

当初、プジョーは2012年もル・マン24時間レースと、復活したFIA世界耐久選手権への参戦を予定していました。さらに、次世代技術の投入として、リチウムイオンバッテリーを搭載したディーゼルハイブリッドカー『908 HYbrid4』の開発も進められていました。2011年11月には、この908 HYbrid4のテスト走行も実施され、その高いポテンシャルが示唆されていました。しかし、レース活動撤退の決定により、この革新的なマシンも日の目を見ることはありませんでした。

プジョー908は、その短い活動期間にも関わらず、優れたパフォーマンスと技術革新を世界に示しました。もし、プジョーが耐久レース活動を継続していたら、どのような活躍を見せていたのか想像すると、多くのファンが惜しむところです。その高いポテンシャルと、惜しまれつつ終わった歴史が、プジョー908の大きな魅力となっています。

もう一度検索