アウディ・TT

アウディTT：25年の歴史と進化

アウディTTは、ドイツの自動車メーカーであるアウディが1998年から2023年まで製造していたスポーツカーです。その名前は、マン島で開催されるツーリスト・トロフィーレースに由来しています。流麗なデザインと優れた走行性能で人気を博し、多くのファンを魅了しました。本記事では、初代から3代目までのTTの歴史を、その特徴やモデルバリエーションとともに詳しく解説します。

初代TT (タイプ8N)：1998年-2006年

初代TTは、1995年に発表されたTTデザインスタディモデルをベースに市販化されました。ドイツ系アメリカ人デザイナー、フリーマン・トーマスの手によるデザインは、アウディDKWモンツァへのオマージュとも言われ、円をモチーフとした内外装が特徴的です。アルミ製パーツを使用した高級感あふれるインテリアや、巧みな収納機構なども魅力でした。プラットフォームはA3やゴルフと共通でしたが、スポーティな走りを追求した設計がなされていました。

当初はクーペのみのラインナップでしたが、2000年には電動ソフトトップを備えたロードスターが追加されました。しかし、発売当初は高速域での横転事故が発生し、急遽リアスポイラーの追加やサスペンションの改良が行われました。このリアスポイラーの装着については、デザイナーのトーマスが反対したという逸話も残っています。

日本市場には左ハンドルMT車から導入され、最終的には右ハンドルAT車のみとなりました。グレードは1.8Tクワトロ、1.8T、3.2クワトロSライン、1.8T Sラインなどがあり、それぞれに個性的な装備が与えられていました。特に、限定車である1.8T Sラインリミテッドや1.8Tクワトロスポーツは、希少価値の高いモデルとして人気を博しました。

2代目TT (タイプ8J)：2006年-2015年

2代目は初代のデザインを踏襲しつつ、シングルフレームグリルなど、当時のアウディデザインの特徴を取り入れました。空調吹き出し口やテールランプのデザインなど、細部にもこだわった作り込みが特徴です。プラットフォームは2代目A3と共通ですが、TT専用に開発されたASF（アウディ・スペースフレームテクノロジー）を採用することで、ボディの約7割をアルミニウム製とし、軽量化と高剛性を実現しました。

高速域での安定性も向上し、電動格納式リアスポイラーやアンダーボディのフラット化により、空力性能も改善されています。オプションで、アウディ初となる磁性流体サスペンション「マグネティックライド」も選択可能でした。日本仕様はTTSとTTRSを除き、右ハンドルのみの設定となりました。グレードは1.8TFSI、2.0TFSIクワトロ、3.2クワトロなどがあり、それぞれに高性能エンジンと先進装備が搭載されました。

また、限定車として2.0T FSIリミテッドやTTSクーペコンペティションなどが発売され、コレクターアイテムとして高い人気を誇ります。さらに、無人運転技術の研究の一環として、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムに挑戦した無人運転実験車「Shelley」も話題となりました。

3代目TT (タイプFV/8S)：2015年-2023年

3代目は、フォルクスワーゲングループのMQBプラットフォームを採用しながらも、ボディ外板は全てアルミ製とすることで軽量化を実現しました。初代とほぼ変わらない外寸ながらホイールベースを延長し、居住性も向上しています。2019年には、アウディはTTを3代目で生産終了すると発表し、2023年11月13日に全モデルの生産が終了しました。

日本市場では、TTクーペ、TTロードスター、TTSクーペ、TT RSなどが販売されました。エンジンは2.0 TFSIや1.8 TFSIなど、ダウンサイジングターボエンジンが採用され、環境性能も考慮された設計となっています。様々な限定車も発売され、ファンを喜ばせました。最終生産車となったTTクーペは、アウディ社内で保存されることになっています。

まとめ

アウディTTは、25年にわたる歴史の中で、デザイン、性能、技術の進化を遂げてきました。初代モデルの独創的なデザインから、洗練された3代目モデルまで、常に時代の最先端を走り続けるスポーツカーとして、多くの自動車ファンに愛されてきました。生産終了は残念ですが、その歴史と功績は、これからも語り継がれていくことでしょう。

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