アウトサイド・ツアー

「アウトサイド・ツアー」（英語: Outside Tour）は、イギリスのミュージシャン、デヴィッド・ボウイが1995年発表のアルバム『アウトサイド』のリリースに合わせて行われた大規模なコンサートツアーです。1995年9月から1996年2月にかけて北米およびヨーロッパ各地を巡業し、一度幕を閉じましたが、同年6月には「アウトサイド・サマー・フェスティバル・ツアー」（英語: Outside Summer Festivals Tour）と名称を変え再開。その後9月14日まで、日本を含むアジア、ヨーロッパ、中東、そして北米を再び巡りました。

背景

このツアーは、1990年の「サウンド+ヴィジョン・ツアー」で過去のヒット曲を封印して以来、ボウイにとって初めてのソロ名義での本格的なツアーでした。また、1992年に開催されたフレディ・マーキュリー追悼コンサート以来のライブステージ出演でもありました。ツアーのリハーサルはニューヨークのスタジオで開始され、その後マリンズ・センターに移り、共同ヘッドライナーを務めるナイン・インチ・ネイルズ（NIN）も合流して行われました。

ボウイはツアーのセットリストについて、過去の楽曲も演奏するものの、安易な選曲ではなく、今回の新しい楽曲と自然に調和するものを選んだと語っています。長年演奏していなかった古い曲が、アルバム『アウトサイド』収録曲と意外なほど良く合うことに気づき、それが「とても気に入っている」と述べ、「ライオンのジョー」などを例に挙げています。他にも「スケアリー・モンスターズ (アンド・スーパー・クリープス)」、「怒りを込めてふり返れ」、「アンディ・ウォーホル」、「壊れた鏡」といった楽曲がセットリストに組み込まれました。

特に注目されたのは、北米レグでのナイン・インチ・ネイルズとの共同ヘッドライナーという形式です。ボウイとNINは互いのセットリストを連続して演奏するという異色のスタイルをとりました。ボウイは、NINとの組み合わせは個人的には好ましかったものの、観客の反応は必ずしもそうではなかったと振り返っています。多くの観客がNIN目当ての若い層だったこともあり、冒険的なアルバムに合わせた冒険的なコンサートにするため、彼らに自身の音楽で挑むのは理にかなっていると考えたと、その意図を説明しています。NINのトレント・レズナーはボウイからの影響を公言しており、過去には「ハーツ・フィルシー・レッスン」のリミックスや「アイム・アフレイド・オブ・アメリカンズ」のミュージックビデオでボウイと協働しています。一方、ボウイは『アウトサイド』制作におけるNINからの影響について問われた際、むしろヤング・ゴッズというスイスのバンドから先に影響を受けていたと答えています。

演出

このツアーのステージデザインは、1987年の「グラス・スパイダー・ツアー」のような劇場型の派手な演出とは対照的に、抑制されたミニマルなものでした。ステージはあたかもペンキが飛び散ったような、しわくちゃのシートに覆われた建築現場を思わせる雰囲気で統一されていました。ステージの片隅には古風なテーブルと椅子が置かれ、ボウイは時折そこに上ってパフォーマンスを行いました。ステージ上部にはネオンサインが掲げられ、「Ouvrez le Chien」（フランス語で「犬を開けろ」の意）というフレーズが表示されました。このフレーズは、ボウイの楽曲「オール・ザ・マッドメン」（1970年）や「郊外のブッダ」（1993年）の歌詞に登場するものです。北米レグの序盤では、「Strange Ko」「Noise Angel」「Man Made」「Street Volva」といった異なるフレーズが日替わりで表示されるネオンサインもありました。

ボウイはツアーを通じて数種類の衣装を着用しましたが、中には当時まだ若手だったアレキサンダー・マックイーンがデザインしたジャケットも含まれていました。

ツアーの展開と記録

ツアー初日の直前、1995年9月14日のインタビューで、ボウイは「どうやったら商業的な自殺ができるんだい？まだリリースされていないアルバムの曲を演奏し、過去の無名の曲で補完するんだ」と語り、このツアーが決して大衆迎合的なものではないことを示唆しました。

北米レグでは、インダストリアル・ロックバンドのプリックがオープニングアクトを務めました。プリックの後、NINが演奏を終えると、ボウイのバンドが登場し、NINと共に数曲を共演しました。このNINからボウイへの転換は、観客にとって大きな変化であり、あるレビューでは「カンザスからオズに飛ばされるようだった」と評されました。初期の公演では、NIN目当ての観客が多数を占めていたため、ボウイにとって挑戦的な状況でした。ボウイ自身も、観客の期待に応える必要性を感じつつも、次第に自身のパフォーマンスを楽しむことに重点を置くようになり、それが観客にも伝わって良いツアーになったと語っています。

ヨーロッパレグではモリッシーがオープニングアクトを務める予定でしたが、途中で降板したため、その後の日程ではザ・ジャイアズ、エコーベリー、プラシーボ、エレクトラフィクションといった地元の様々なバンドがサポートを務めました。

1996年 2月20日のパリ公演をもって前半ツアーは終了しましたが、名称を「アウトサイド・サマー・フェスティバル・ツアー」と改め再開された後半ツアーには、一部メンバー（ジョージ・シムズ、ピート・シュワルツ、カルロス・アロマー）が不参加でした。この時期には、制作中のアルバム『アースリング』からの新曲も披露されました。

このツアーからは、複数の公演が公式に記録されています。1995年 10月13日のダラス公演は『ウーヴレ・ル・シアン (ライヴ・ダラス '95)』として、12月13日のバーミンガム公演は『ノー・トレンディ・レショフェ (ライヴ・バーミンガム '95)』として、いずれも2020年にリリースされました。また、1996年 6月18日のモスクワ公演は録画されロシアのテレビで放送されたほか、6月22日のローレライ・フェスティバル公演（ドイツのテレビ局ロックパラスト）、7月18日のフェニックス・フェスティバル公演（イギリスのテレビ、BBCラジオ）なども映像や音声で記録・放送されました。フェニックス公演からの「ハーツ・フィルシー・レッスン」は、ライブアルバム『LIVEANDWELL.COM』（1999年）にも収録されています。

参加ミュージシャン

デヴィッド・ボウイ – ボーカル
リーヴス・ガブレルス – ギター
カルロス・アロマー – ギター, バッキング・ボーカル (後半ツアー不参加)
布袋寅泰 - ギター (1996年6月5日のみ)
ゲイル・アン・ドロシー – ベース・ギター、ボーカル
ザッカリー・アルフォード – ドラムス
マイク・ガーソン – ピアノ
ピーター・シュワルツ – シンセサイザー、音楽監督 (後半ツアー不参加)
* ジョージ・シムズ – バッキング・ボーカル、キーボード (後半ツアー不参加)

このツアーは、当時の音楽シーンにおいて異色ともいえる組み合わせや前衛的なアルバムの世界観をライブで表現しようとした試みとして、ボウイのキャリアにおいて重要な位置を占めています。

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