モリッシー

スティーヴン・パトリック・モリッシー、通称モリッシーは、1959年5月22日生まれのイギリスのシンガーソングライターです。1980年代にザ・スミスというバンドのボーカリストとして、当時の若者たちから熱狂的な支持を集めました。ザ・スミス解散後はソロアーティストとして活動し、現在に至るまで音楽シーンに多大な影響を与え続けています。

ザ・スミス時代

1982年から1987年にかけて活動したザ・スミスは、モリッシーの独特な歌声と、ジョニー・マーのギターサウンドが特徴的なバンドでした。モリッシーの歌詞は、当時の社会情勢や若者の鬱屈とした感情を表現しており、多くの共感を呼びました。特に、マーガレット・サッチャー政権下の不況にあえぐ若者たちの代弁者として、絶大な人気を博しました。

ソロ活動

ザ・スミス解散後、モリッシーはすぐにソロ活動を開始しました。解散からわずか半年後には、ザ・スミスのアルバム『ストレンジウェイズ、ヒア・ウイ・カム』のプロデューサーだったスティーヴン・ストリートと、ザ・ドゥルッティ・コラムのギタリストであるヴィニ・ライリーと共に、ソロアルバム『ビバ・ヘイト』をリリースしました。このアルバムは全英アルバムチャートで1位を獲得し、ザ・スミス解散後のモリッシーのソロ活動における成功を確固たるものとしました。アルバムのタイトル「憎悪万歳」は、ザ・スミス末期の状況を反映していると言われています。

ディスコグラフィー

モリッシーは、数多くのスタジオアルバム、ライブアルバム、コンピレーションアルバムをリリースしています。以下に主な作品をいくつか紹介します。

スタジオアルバム

ビバ・ヘイト（1988年）
キル・アンクル（1991年）
ユア・アーセナル（1992年）
ヴォックスオール・アンド・アイ（1994年）
サウスポー・グラマー（2014年）
ロウ・イン・ハイ・スクール（2017年）
アイ・アム・ノット・ア・ドッグ・オン・ア・チェーン（2020年）

映像作品

ヒューメリスト（1990年）
シング・ユア・ライフ（1991年）
ザ・マラディー・リンガーズ・オン（1992年）
ライヴ・イン・ダラス（1993年）
イントロデューシング・モリッシー（1996年）
オイ・エステバン（2000年）
フー・プット・ジ　M　イン・マンチェスター？（2005年）

コラボレーション

モリッシーは、他のアーティストとのコラボレーションも行っています。代表的なものとして、スージー・スーとのデュエット曲「Interlude」や、ナンシー・シナトラのアルバムへのコーラス参加などが挙げられます。

他ミュージシャンへの評価

モリッシーは、その辛辣な物言いで知られており、他のミュージシャンへの評価も時に物議を醸すことがあります。以下に、モリッシーが言及した主なミュージシャンとその発言の一部をまとめます。

セックス・ピストルズ: 「横柄だが、成功を願っている。彼らが成功すれば、あの“ベッドから抜け出したような小汚い衣装”を買い換える事ができるんじゃないだろうか？」
ザ・キュアー: 「『クソ』という言葉の新たな代名詞」であり、ロバート・スミスは「文句ばかり言う奴」と批判。
ジョイ・ディヴィジョン: 「そこまで意識していたバンドというわけでもなかったが、今は彼らの良さがわかる」
ボノ: 「ソングライターとしての才能は僕よりボノが上だとさ。まあ、彼はすごいのかもな。でも誰が本気でそう思っているんだろう？」と辛辣に発言。
デペッシュ・モード: 「彼らの洗練されたナンセンスは、彼らがどれほど浮かれて想像力に欠けてるかを強調する事に成功している」
エルトン・ジョン: 「彼は常に全力で自分の私的な生活について話してくる。誰も興味を持っていないのに。どこかに行ってしまえばいいと思う」
マドンナ: 「すべてを馬鹿げた不快なものにする力がある。マドンナは他の何よりも管理売春に近い存在だ」
オアシス: 「僕にはとっても退屈なんだ。ノエルに神の御加護を。彼は『ボブズ・フル・ハウス』にいつでも出られそうだけど、もう少し反抗や怒りのある何かをあいつには求めているよ」
ビヨンセ: 「現在サイはほぼ絶滅しそうだが、これは地球温暖化や生息地の縮小のせいじゃない。ビヨンセのハンドバッグが原因だ」
ラモーンズ: 「意義や重要性が皆無であり、何も言う事はないし、さっと綺麗に忘れ去られるべきだ」（ただし、モリッシーは後述の通り、好きなアルバムにラモーンズを挙げている）
ケイト・ブッシュ: 「本当にケイト・ブッシュの事が良いと思うのか？　僕が彼女について最も良いと思うところといったら、我慢できないところだ。あの声！あんなのはゴミだ！」
エアロスミス:「アメリカのダンス・シーンのバンドの一つに過ぎない。ヴォーカルのスティーヴン・テイラーは、マイクで歯を磨こうとしてるようにしか聴こえない」
プリンス: 「エリザベス2世よりずっと『ずっと王家らしく気高い』存在であり、彼女よりはるかに哀悼されるだろう」
アークティック・モンキーズ：「とても気に入っているし、親切心から懸念を口にしただけ。彼らの成功を突然すぎるとか、何の下積みもないって事を僕が言うのは間違っていた。スミスにも全く同じ事が起こったんだから。」
ルー・リード：「ルー・リードの死に対する悲しみを表す言葉はない。彼は僕の生涯ずっとそこにいたんだ。彼はこれからも僕の心に迫り続けるだろう」
マイケル・スタイプ：「彼が歯も磨かずに、普段着のままステージに上がる姿はかっこいいと思う。僕には絶対そんな事は出来ないからね」「マイケルの声はとても田舎じみたジョン・デンバーのようだ。実際彼の本名は『ジョン』だった」

人物像

モリッシーは菜食主義者（ベジタリアン）として知られており、動物愛護の立場を明確にしています。しかし、2010年には中国人に対して動物虐待を行う劣等人種という発言をし、批判を浴びました。彼はこの発言を撤回せず、中国の動物虐待は全世界で最悪だと反論しました。

また、ロックバンド・ニューヨーク・ドールズの大ファンであり、ザ・スミス結成前にはファンクラブのイギリス支部長を務めていたこともあります。2004年のニューヨーク・ドールズ再結成は、モリッシーの働きかけによるものでした。

モリッシーは、飛行機嫌いとしても知られていますが、過去に何度か来日公演を行っています。また、音楽フェスティバルのディレクターを務めるなど、音楽活動以外にも幅広い活動を行っています。

モリッシーのファッションの特徴としては、ザ・スミス時代にジーンズを着用し、ヒップポケットにグラジオラスの花を挿していたことが挙げられます。また、「タコ踊り」と呼ばれる独特な腰の動きも彼のトレードマークとなっています。

政治的な立場については、かつては左派と見られていましたが、近年は右派の政治家や反イスラム政党への支持を表明しており、物議を醸しています。

日本公演

モリッシーは過去に何度も日本で公演を行っています。

1991年、1995年、2002年のサマーソニック、2012年、2016年にそれぞれ日本ツアーを実施しています。各公演の詳しい日程は上記の通りです。

モリッシーは、その音楽性、キャラクター、発言など、様々な側面から注目を集めるアーティストです。彼の音楽は、多くの人々に感動と影響を与え続けており、その存在はロック史において非常に重要な位置を占めています。

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