アオゾウ地帯

アオゾウ地帯の概要

アオゾウ地帯は、チャドの北方に位置する約100キロメートル幅の帯状の土地であり、リビアと国境を接しています。この地域は、ティベスティ州、西エネディ州、東エネディ州の各地にまたがり、その総面積は約11万4千平方キロメートルに及びます。アオゾウという名称は、ティベスティ州内に存在するオアシスに由来しています。特に、この場所はチャドとリビアの間での歴史的な紛争と密接に関連しています。

アオゾウ地帯の歴史的背景

この土地は、第一次世界大戦後のパリ講和会議において初めて定義されました。1919年、イタリアはドイツの植民地を取得する代わりに、イギリスおよびフランスからの領土を譲渡される合意を結びました。1935年にはフランスとイタリアの間でローマ協定が結ばれ、アオゾウ地帯がイタリア領リビアに譲渡されることが決まりました。この条項は、フランス保護領チュニジアにおけるイタリア人の地位問題の解決や、ナチスドイツとの連携を防ぐ目的でもありました。

しかし、ナチスドイツとイタリアが協定を結ぶと、フランスとイタリアの関係は急速に悪化します。締結された条約は実行されぬままになり、アオゾウ地帯の国境は慣習的に扱われることとなりました。1951年、リビアが独立した後の1955年には、再びフランスとリビアの間でアオゾウ地帯に関する条約が締結され、フランス領とされました。チャドは1960年に独立を果たしましたが、アオゾウ地帯に関する争いは続きました。

紛争の経緯

この地域は豊富なウラン鉱脈が存在するとされ、1973年にリビアがアオゾウ地帯に侵攻しました。この侵攻は「チャド・リビア紛争」と呼ばれる激しい戦争に発展しました。リビアは、地域住民が歴史的にサヌーシー教団やオスマン帝国に忠誠を誓っていたため、アオゾウはリビアの領土であると主張しました。一方で、チャドは1955年のフランス・リビア条約に基づくと主張し、地域を確保するために抵抗しました。

1973年、アオゾウ地帯は完全にリビア軍に占領されましたが、1987年の「トヨタ戦争」では、チャド軍が大規模な攻勢をかけ、リビア軍をほぼ排除することに成功しました。その後、停戦が成立し、交渉が行われましたが、長期的な解決には至りませんでした。

国際的な判決と監視

1994年、国際司法裁判所がアオゾウ地帯に対するチャドの主権を認める判決を下しました。この判決に対し、リビアの主張は退けられ、安保理決議915により国連はアオゾウ地帯のリビア軍撤退を監視するための国際連合アオゾウ帯監視団を設置しました。この監視団は、リビア軍の撤退が完了した後の同年6月に解散しました。

アオゾウ地帯はチャドとリビアの国境に位置する重要な地域であり、その歴史は多くの国々の利害関係が交錯する複雑なものとなっています。

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