アカリンダニ

アカリンダニ（Acarapis woodi）とは



アカリンダニは、クモの仲間であるケダニ亜目に属する非常に小さなダニで、ミツバチの体内に寄生することで知られています。その小ささゆえに、肉眼で確認することはほぼ不可能です。ミツバチに寄生し、時には深刻な被害をもたらすため、養蜂家にとっては警戒すべき存在です。

形態



アカリンダニは、ダニ類の中でも特に小型です。雌成虫の体長は約0.143〜0.174mm、体幅は約0.077〜0.081mm。雄成虫はさらに小さく、体長は約0.125〜0.136mm、体幅は約0.060〜0.077mmです。体表は柔らかく、まばらに長い剛毛が生えています。外見は、Acarapis externusやAcarapis dorsalisといった他の種と似ています。8本の脚を持ち、クモの仲間であることがわかります。

生態



アカリンダニは、ミツバチの胸部にある第一気門から気管内に侵入し、そこで繁殖します。稀に、頭部や腹部の気嚢にも侵入することがあります。寄生対象となるのは、主に日齢9日以下の若いミツバチです。幼虫や成熟した成虫からの発見例はほとんどありません。幼虫、成虫ともに気管壁に穴を開け、リンパ液を吸って栄養を得ます。

気門の一箇所に多数のアカリンダニが密集すると、気管が閉塞してしまうことがあります。これにより、飛翔に必要な筋肉への酸素供給が滞り、ミツバチの発熱能力や飛翔能力が低下します。最悪の場合、飛翔筋そのものがダメージを受けることもあります。寄生されただけでは死に至ることはありませんが、ミツバチの寿命が短縮することは実験で確認されています。また、アカリンダニの寄生率が30％を超えると、ミツバチの群れは越冬システムが崩壊し、全滅する危険性が高まると報告されています。

世界的には蜂群崩壊の原因の一つとして知られていますが、日本ではセイヨウミツバチに対する大きな被害は確認されていません。これは、セイヨウミツバチがニホンミツバチに比べて、アカリンダニに対する抵抗性が高いことが理由と考えられています。セイヨウミツバチはニホンミツバチの約2倍の頻度でグルーミング（毛繕い）を行い、付着したダニを効果的に除去できるためです。

分布



アカリンダニは、1921年にイギリスで初めて発見されました。その後、ヨーロッパを中心に世界中に分布を拡大しています。日本でも2010年に野生のニホンミツバチから発見され、2015年現在では関東、中部地方から九州にかけて報告地域が広がっています。

生活環



アカリンダニの雌は、ミツバチの第一気門から侵入した後、約1週間後に平均6個前後の卵を産みます。産卵期間は3〜4日ほどで、卵は幼虫期、若虫期を経て、雄は11日後、雌は14日後に成虫となります。成虫になったアカリンダニは気管内で交尾を済ませ、ハチの体毛を上って他のハチに乗り移る機会を待ちます。宿主のハチが別のハチと接触した際に乗り移り、次のサイクルに入ります。

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