アキバザイジュウ

『アキバザイジュウ』

『アキバザイジュウ』は、漫画家・稜之大介が自身の体験を基に描いた異色のレポート漫画作品です。集英社の漫画雑誌『ジャンプスクエア』にて、創刊号にあたる2007年12月号から2008年8月号にかけて連載されました。作者である稜之大介氏自身が主人公として登場し、秋葉原の知られざる魅力を探る体当たり取材が描かれています。

概要

物語は、新人漫画家である稜之大介氏が、担当編集者のホソノ氏から「秋葉原をレポートしてみないか」という突飛な提案を受けることから始まります。この企画の根幹となるコンセプトは「実際に秋葉原に住み込み、その街の面白い場所や文化を体験して漫画にする」というものでした。しかし、現実には編集部から引越し費用が出ないという事態が発生。このため、主人公の稜之氏はタイトルにある「アキバザイジュウ」という状態にはなれず、秋葉原へと通いながらレポートを行うことになります。住居は秋葉原の沿線にあり、この「秋葉原に住んでいない」という事実を担当編集者のホソノ氏にしばしば指摘されながら、稜之氏は半ば渋々、時に戸惑いつつも様々なレポートに挑んでいきます。

主な登場人物

稜之大介（かどくに だいすけ）
本作の主人公であり、原作者本人でもあります。常にヘアバンドを着用しているのが特徴です。当初の企画では秋葉原に実際に住んでレポートを行うはずでしたが、編集部からの引越し費用が出なかったため、結局秋葉原に住むことはありませんでした。この設定が、担当編集者ホソノ氏との掛け合いの中で度々ユーモラスな要素となります。秋葉原の様々な文化やスポットに対し、新人漫画家としての視点からリアルなリアクションを見せます。

ホソノ
稜之大介氏の担当編集者。本作の発端となる秋葉原レポート企画を提案した人物です。別名「鬼のホソノ」と呼ばれることもありますが、時として「仏のホソノ」となる二面性を持つ人物として描かれています。しかし、その行動には何かを企んでいる節が多く、主人公の稜之氏からは「ノープラン」と評されることもあります。稜之氏を様々なレポートへと駆り立てる存在です。

レポート内容

作中では、稜之大介氏が担当編集者ホソノ氏の指令を受け、多岐にわたる秋葉原及び関連スポットのレポートを行います。その内容は秋葉原のサブカルチャーから技術、さらには予想外の企画にまで及びます。

秋葉原にあるリフレッシュできる耳かき専門店を体験取材。
自身がコスプレ衣装を着用し、その体験をレポート。
メイドがインストラクターを務めるユニークなフィットネスジムを体験。
二足歩行ロボットの最先端技術について取材。
秋葉原を離れ、原宿にてペン回しの達人に密着取材。
急なテコ入れにより、海外出張予定が中止となり別のレポートに変更。
ゲーム作品『Tales of Innocence』の作者である海童博行氏と共に、イベントでの展示ブースを出店する企画に挑戦。
実写映画版『ドラゴンボール』に関する取材を前後編に分けて実施。この取材回が最終回となりました。

これらのレポートを通して、当時の秋葉原の多様な側面や、一人の漫画家が新たな題材と向き合う過程が描かれています。作者自身のリアルな葛藤や編集者とのユーモラスなやり取りも交えながら、読者に秋葉原の魅力を伝えた作品と言えます。

関連情報

ジャンプスクエア内公式サイトがかつて存在しました。

『アキバザイジュウ』は、単なる紀行文ではなく、作者自身の体験と、それを企画・進行する編集者との関係性も同時に描くことで、漫画制作の舞台裏の一端も垣間見せるユニークなレポート漫画として読者の関心を集めました。

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