アクイロプス

アクイロプス

*アクイロプス（Aquilops）は、中生代白亜紀前期、具体的には約1億800万年前から1億400万年前にかけてのアルビアン期に、現在の北米大陸に生息していた角竜類の恐竜に分類される属です。この属は単型であり、模式種としてアクイロプス・アメリカヌス（Aquilops americanus）のみが知られています。

発見と命名

アクイロプスの存在が明らかになったのは、1997年のことでした。古生物学者スコット・マドセンが、アメリカ合衆国モンタナ州南部に位置するカーボン郡の地層から、単独の部分的な頭骨化石を発見しました。この化石はクリーニング作業中に、当初は別の小型恐竜であるゼフィロサウルス属のものとして整理されていました。しかし、その後の詳細な観察と研究により、マドセンはこの標本が未知の新種の恐竜のものであることに気づきました。この発見は、1997年にナショナルジオグラフィック協会の支援を受けた古生物学的な探査の一環として行われたものです。

この新種恐竜は、発見からしばらく時を経て、2014年に正式に命名され、科学的に記載されました。記載を行ったのは、アンドリュー・ファルケを中心とする研究チームです。属名「アクイロプス」（Aquilops）は、ラテン語で「ワシ」を意味する「aquila」と、古代ギリシア語で「顔」を意味する「ὤψ」（ops）を組み合わせた造語です。これは、アクイロプスが持つ、まるでワシのようなくちばし状の特徴的な吻部（顔の先端部分）にちなんで名付けられました。種小名「アメリカヌス」（americanus*）は、「アメリカの」という意味で、この恐竜がアメリカ合衆国で発見された、非常に初期段階にある基盤的なネオケラトプス類であったことに由来しています。

模式標本、すなわちホロタイプ（登録番号 OMNH 34557）は、モンタナ州のクロバリー累層から発見されました。この累層の地質年代はアルビアン期にあたります。ホロタイプの化石は、頭骨の大部分と下顎骨を含んでいますが、完全に成熟していない亜成体の個体のものであると考えられています。また、頭骨の後頭部や口蓋（上あごの天井部分）は大部分が失われています。

形態的特徴

発見されたホロタイプの頭骨は、長さが84.2mmでした。しかし、これは先述の通り亜成体の個体のものであり、完全に成長したサイズではありません。近縁の恐竜との比較研究に基づき、この標本が成体の約60%程度の大きさであったと推定されています。この推定を踏まえ、古生物学者のウェデルは、アクイロプスの成体の全長を約60cm、体重を約1.5kgと見積もっています。これは、当時の角竜類としては比較的小型の部類に入ります。

記載論文において、研究者たちはアクイロプスが持ついくつかの独特な形態的特徴、すなわち固有形質（autapomorphies）を指摘しています。その一つに、嘴（くちばし）の骨の芯となる部分が挙げられます。この骨芯は、下向きに大きく湾曲しており、その正面には瘤（こぶ）のように盛り上がったアーチ状の隆起が見られます。また、上顎骨の後ろ側の歯が並ぶ列（歯列）は、正面から見たときの長さが、側面から見たときに歯列が収まる窪みの全長よりも長いという特異な形状をしています。さらに、眼窩（がんか：目の入る穴）の前に位置する窓状の開口部（前眼窩窓）は、その長さが高さの約2倍あり、後方に向かって鋭く尖った形状をしています。この前眼窩窓は、眼窩の下方にまで伸びるという特徴も持っています。

これらの特徴は、アクイロプスが初期の段階で他の角竜類から分岐した、ネオケラトプス類の中でも特に基盤的なグループに属することを示唆しています。アクイロプスの発見は、北米における初期角竜類の進化や多様性を理解する上で、貴重な情報をもたらすものとして重要視されています。

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