アクティブ・ディナイアル・システム

アクティブ・ディナイアル・システム（ADS）：非致死性兵器の光と影

アクティブ・ディナイアル・システム（ADS）とは、アメリカ軍が開発した、暴動鎮圧などを目的とした指向性エネルギー兵器です。このシステムは、高周波のミリ波を対象に照射することで、皮膚の表面温度を上昇させ、あたかも火傷を負ったかのような感覚を引き起こします。致死的な被害を与えることはありませんが、強烈な熱感により対象者をその場から撤退させる効果が期待されています。

ADSの仕組みと効果

ADSは、95GHzという非常に高い周波数のミリ波を使用します。これは電子レンジで使用される周波数（2.45GHz）よりもはるかに高く、皮膚の表面にのみ作用し、内部組織への影響はほとんどないとされています。照射範囲は450メートルにも及び、広範囲への効果が期待できる一方、正確な照準も可能です。

開発と実戦配備

2007年にはジョージア州ムーディ空軍基地で、ハンヴィーに搭載されたADSの実演が行われました。ロイター通信の記者が自ら実験台となり、その体験を「オーブンで焼かれているみたいだった」と表現しています。その後、2010年には短期間ですが、アフガニスタンに実戦配備されたことが公表されています。2012年にはバージニア州クアンティコ海兵隊基地でメディア向け体験会が開催され、更なる注目を集めました。

安全性に関する論争

ADSの安全性については、長年にわたって軍による研究が行われてきました。しかしながら、すべての研究結果が公表されたわけではなく、その点に疑問の声も上がっています。特に、実験に際してボランティアに眼鏡やコンタクトレンズ、金属物の除去を依頼した点など、実戦での使用状況を反映していないとの批判があります。

一方、ADS支持者側は、600人以上のボランティアを対象に約10,200時間もの照射実験を行い、安全性を確認したと主張しています。また、現在では特別な規制や予防措置は不要だと説明しています。

倫理的な問題点

ADSは非致死性兵器として開発されましたが、その使用によっては人道上の問題が生じる可能性があります。批判する意見としては、オペレーターの操作次第では、国際条約に抵触する拷問行為に利用される危険性があるという指摘です。一時的に無能力化させることを目的とした兵器であっても、その使用目的や状況によっては、深刻な倫理的問題を招く可能性を否定できません。

まとめ

ADSは、その有効性と潜在的な危険性を併せ持つ複雑な兵器です。非致死性兵器としての可能性を秘めている一方で、その使用には慎重な検討と厳格な倫理的基準が不可欠です。今後、ADSのような指向性エネルギー兵器の開発と利用においては、技術的な進歩と同時に、倫理的な問題点への対応が重要な課題となるでしょう。

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