アクロイド殺し

『アクロイド殺し』の概要

『アクロイド殺し』（原題：The Murder of Roger Ackroyd）は、アガサ・クリスティが1926年に発表した長編推理小説であり、彼女のエルキュール・ポアロシリーズの一部でもあります。この作品は推理小説の中でも特に評価が高く、数々の議論を呼ぶ特異なトリックが使用されています。出版当初は『ロンドン・イブニング・ニュース』紙に54話に分けて連載され、その後コリンズ社から単行本として販売されました。

物語のあらすじ

物語は、キングズ・アボット村に住む裕福な未亡人、フェラーズ夫人の死から始まります。検死を行ったジェイムズ・シェパード医師は、彼女が睡眠薬の過剰摂取で亡くなったと報告しますが、彼の噂好きな姉、キャロラインは自殺だと主張します。その後、シェパード医師は、アクロイドとの夕食に招かれ、彼から再婚を考えていたフェラーズ夫人が一年前に夫を毒殺したと告白されたこと、そして恐喝を受けていると聞かされます。彼の元に届いたフェラーズ夫人の手紙は、恐喝者の名を告げる内容でしたが、アクロイドは最後に手紙を封印し、翌朝には刺殺されてしまいます。

事件発生後、アクロイドの遺産を受け継ぐはずだったラルフが行方不明になり、警察は彼を主要な容疑者とします。アクロイドの姪フローラがポアロに捜査を依頼し、彼はすぐに調査を開始します。調査の過程で、様々なキャラクターに目を向け、彼らの背景や関係性を掘り下げていきます。事件当日に見かけられた不審者についての情報や、アクロイドの家でも起こった様々な出来事が明らかになり、容疑者が増えます。

トリックと評価

『アクロイド殺し』の最大の特徴は、物語がシェパード医師の手記を通じて語られる点です。彼は探偵ポアロと共に事件を解決しながら、自身が実は犯人であるという巧妙な叙述トリックを仕掛けています。この方式が「語り手＝犯人」という新しい形を提案し、後の推理小説に大きな影響を与えました。しかし、このトリックが果たしてフェアかどうかについて、批評家たちの間で活発な議論が交わされました。一部の作家や評論家、特にヴァン・ダインはこの手法を非難し、読者を欺くものとして評価しましたが、対する支持者も多く、作品の面白さやユニークさの観点から高く評価されています。

作品は発表から数十年経った現在でも高い評価を得ており、日本でも多くの読者から愛されています。本作の評価は年々不動のものとなり、クリスティ自身の代表作の一つとして名を轟かせています。これにより、クリスティはミステリー作家としての地位を確立し、以後も多くの作品を発表することとなります。

結論

『アクロイド殺し』は、その独特の叙述スタイル、巧妙なプロット、並びにキャラクターたちの心理描写によって、単なる推理小説以上の文学的な価値を持つ作品となっています。この作品は、推理小説の新しい可能性を示すと同時に、読者に挑戦を投げかける一冊であり、推理作家アガサ・クリスティの名声を確立する重要な要素となりました。

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