アグスティン・デ・ベタンクル

アグスティン・デ・ベタンクル・イ・モリーナの生涯と業績

アグスティン・デ・ベタンクル・イ・モリーナ（1758年2月1日 - 1824年7月14日）は、スペイン生まれの著名なエンジニアであり、都市計画家として広範な業績を残した人物です。彼はスペイン国内のみならず、フランスやロシアにおいても重要な活動を行いました。彼のキャリアは、機械工学の技術から建設工学、都市計画に至るまで、多岐にわたりました。

彼はテネリフェ島プエルトデラクルスに生まれ、1778年にはマドリードのサン・イシドロ王立大学に入学。工学を専攻し、1783年に卒業後、最初はアルマデン鉱業に関連したアラゴン運河で業務を開始しました。その後デ・ベタンクルは1784年にパリに渡り、工業学校でさらなる勉強をし、フランスやイギリスにおいて数年間活動を続けました。

1807年には、ロシアのアレクサンドル1世に招かれ、サンクトペテルブルクに数ヶ月滞在しました。この訪問をきっかけに、後にロシア軍元帥から技術部隊の審査官に任命され、皇帝が亡くなるまでの間ロシアに留まることになりました。特に彼は1809年にロシア国内初の工科大学、サンクトペテルブルク通信学大学校の設立に尽力し、この大学校は1824年まで工業系の最高教育機関として重要な役割を果たしました。

ロシア滞在中、デ・ベタンクルはさまざまな公共事業に関わり、技術研究の指導者として活躍しました。彼が手がけたプロジェクトには、ネヴカ橋の設計や、トゥーラ兵器工場およびカザン大砲製造工場の建設、ヴォルガ川の蒸気船や水供給システム、また鉄道の開発など多岐にわたりました。1810年には、クロンシュタットなどの国土構築工事を行い、運河や浚渫に蒸気機関を活用するための浚渫船を建造しました。彼が発明した浚渫船は、特許法が制定される前に開発されたため、最終的に他の者が特許を持つことになりました。

1815年には、著名な技術者チャールズ・ベアードと共同でロシア初の汽船「Yelizaveta」を設計しました。翌年には、木造のマカリエフフェアが失火で破壊されたことを受け、ニジニ・ノヴゴロドから現地を訪れ、4年間で600万ルーブルをかけた石造の再建プロジェクトを提案し、特に大聖堂の近代化に取り組みました。このプロジェクトでは、オーギュスト・モンフェランを担当建築家として起用し、デザインや全体計画を監督しました。1822年に完成した「救主大聖堂」は、この年に祭事を迎えることとなり、1930年まで運営が続けられました。また、彼はニジニ・ノヴゴロドにおいて二つの歴史的教会の保全や都市刑務所、ファウンドリの建設などにも関与しました。

1819年には、ロシア国土道路部の評議会から高速道路計画の策定を任され、サンクトペテルブルクからモスクワまでの道に加え、国内の産業政策においてトゥーラとカザン兵器工場を結ぶ道路網の形成に力を入れました。これにより、ロシア初の近代的な高速道路の設計を行い、彼の影響は造詣の深さを物語ります。

デ・ベタンクルの業績は、彼の誕生250周年を記念して2008年にロシア共和国によって発行された記念切手にも刻まれています。彼の技術者としての功績や都市計画における貢献は、今なお多くの人々に認識され、称賛されています。

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