アグノーメン

古代ローマのアグノーメン：個人を彩る称号

古代ローマの人名体系において、アグノーメンは個人の識別に用いられた称号です。初期には愛称として用いられましたが、時代が進むにつれて、同名の人物を区別する役割を担うようになりました。本記事では、アグノーメンの定義、語源、具体的な例、そして偽名との違いについて詳しく解説します。

アグノーメンとは

アグノーメン（agnomen）は、ラテン語で「名に添えるもの」を意味します。古代ローマの人名は、通常、プラエノーメン（個人名）、ノーメン（氏族名）、コグノーメン（家族名）の3つで構成されます。アグノーメンは、この3つに加えて、個人の功績や特徴を表すために付与される称号でした。

文法家プロブスは、スキピオ・アフリカヌスを例に挙げてアグノーメンを説明しています。また、マリウス・ウィクトリヌスは、アフリカヌスやクレティクスといった称号が戦功によって与えられたことを解説しています。例えば、ガイウス・マルキウス・コリオラヌスは、ヴォルサイ人からコリオリを奪還した功績により、「コリオラヌス」のアグノーメンを得ました。

語源

アグノーメンは、ラテン語の「ad」（～へ）と「nōmen」（名前）が組み合わさった言葉で、「名に添えるもの」という意味を持ちます。これは、アグノーメンが個人の名前に追加される形で用いられたことを示しています。

カリグラの例

皇帝カリグラは、アグノーメンが個人名として広く知られるようになった数少ない例です。カリグラの本名はガイウス・ユリウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスですが、「カリグラ」という愛称が本名よりも一般的に使用されました。「カリグラ」は、彼が幼少期に父ゲルマニクスのゲルマニア遠征に同行した際、着用していた小さな軍靴に由来します。

また、ゲルマニクス自身も、父ドルススからゲルマン民族に対する勝利を称えて贈られた「ゲルマニクス」のアグノーメンをプラエノーメンとして受け継いでいます。

アグノーメンと偽名の違い

アグノーメンは偽名とは異なり、正式な名前の一部として扱われます。アグノーメンは、個人のフルネームを置き換えるものではなく、あくまで追加されるものです。現代では、トーマス・ジョナサン・"ストーンウォール"・ジャクソンや、"アイアン"・マイク・タイソン、アーヴィン・"マジック"・ジョンソンのように、アグノーメンの方が本名よりも有名になるケースもあります。

アグノーメンは、古代ローマの人々を識別し、その功績を称えるために重要な役割を果たしました。現代においても、アグノーメンの概念は、スポーツ選手や著名人の愛称として受け継がれています。

参考文献

(参考文献リストは省略)

関連項目

古代ローマの人名
プラエノーメン
コグノーメン
* 字

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