アグリードール (映画)

アグリードール：不完全な人形たちの、美しくも感動的な物語

2019年公開のアメリカ映画『アグリードール（UglyDolls）』は、子供向けアニメーション映画でありながら、大人も楽しめる奥深い物語が魅力です。監督はケリー・アズベリー氏で、本作が遺作となりました。日本では劇場公開されませんでしたが、2020年7月22日にデジタル配信され、多くの視聴者を獲得しました。

物語：アグリーヴィルから始まる冒険

舞台は、人間のように意志を持つ人形たちが暮らす世界。完璧な人形は子供たちのもとへ届けられますが、製作過程で傷ついた「不完全」な人形たちは、都会から遠く離れたアグリーヴィルという村に捨てられていました。

モキシーは、アグリーヴィルの住人である人形の一人。彼女は「大きな世界」への憧れを抱き、子供たちの玩具になることを夢見ています。村長のオックスは、それをただの空想だと諭しますが、モキシーの強い意志は変わりません。

ある日、村の賢者ラッキー・バットから、アグリーヴィルへの入り口の穴が、モキシーが願う「大きな世界」への道につながっているかもしれないと助言を受けます。モキシーは友人たちと共に、その穴の調査に乗り出します。

穴を抜けると、そこには「完璧機構」という、完璧な人形だけを子供たちへ送る巨大な施設がありました。モキシーたちは、機構の責任者ロウにテストを受けさせてほしいと懇願しますが、あっさり拒否されます。しかし、モキシーの粘り強い訴えに、ロウは特別に試験を受けることを許可します。

完璧機構の宿舎で、彼らはマンディという人形と出会います。マンディは視力が悪いにもかかわらず、眼鏡をかけることを拒否します。それは、自分自身の不完全さを認めたくないという、彼女の強いプライドの表れでした。

テストのトレーニングは、モキシーたちにとって苦難の連続でした。一方、ロウは手下を使って、かつての友人であるオックスを捕らえます。オックスは、不完全であることの苦しみを身をもって知っていたため、アグリーヴィルの人形たちに外の世界のことを隠していたのです。

自信を失ったモキシーはアグリーヴィルに帰ろうとしますが、マンディの励ましによって、再び挑戦することを決意します。しかし、ロウの手下に捕まり、デス・トラップに落とされてしまいます。絶体絶命の危機を仲間たちに救われ、モキシーたちは全員でテストに挑むことを決意します。

キャスト：豪華声優陣が集結

本作には、多くのハリウッドスターが声優として参加しています。主人公モキシーをケリー・クラークソン、マンディをジャネール・モネイ、ロウをニック・ジョナスが演じています。日本語吹き替え版も、沖佳苗、大橋彩香、松本梨香など、実力派声優陣が担当し、作品の魅力を高めています。

製作：ハリウッド大作の舞台裏

『アグリードール』の映画化は、2011年にイルミネーション・エンターテインメントが権利を獲得したことから始まりました。その後、STXエンターテインメントが製作に参加し、監督はロバート・ロドリゲス氏からケリー・アズベリー氏へと交代するなど、幾多の困難を乗り越えて完成しました。

音楽制作はクリストファー・レナーツ氏、主題歌にはケリー・クラークソンの『Broken & Beautiful』、アニッタの『Ugly』など、豪華な楽曲が使用されています。

公開は当初2019年10月4日の予定でしたが、『名探偵ピカチュウ』との競合を避けるため、10月11日に変更されました。マーケティングには約4000万ドルが投じられました。

興行収入と評価：興行成績は低調も、普遍的なテーマが共感を呼ぶ

公開初週末の興行収入は860万ドルと予想を下回りましたが、友情や自己肯定といった普遍的なテーマは多くの視聴者の共感を呼びました。批評家の評価は芳しくなく、Rotten Tomatoesでは支持率32％と低い評価にとどまりました。しかし、子供たちを中心に、作品の世界観やキャラクターの人気に支えられた作品となっています。

アグリーヴィルの住人たちが織りなす、感動とユーモアに満ちた物語は、見る人の心に温かい光を灯してくれることでしょう。不完全な姿をしているからこそ輝く、彼らの勇気と友情は、世代を超えて多くの人々の心に響く、忘れられない作品です。

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