アサクサノリ

アサクサノリ（浅草海苔）

アサクサノリ（浅草海苔、学名: Neopyropia tenera）は紅藻に属する海藻で、日本では古くから食用として親しまれてきました。この海藻は、主に内湾や河口の潮間帯に生息し、ヨシや杭、貝殻などに着生します。しかし、1970年代から養殖が行われなくなり、内湾環境の変化に伴い野生個体群も減少してきました。その結果、2020年には日本で絶滅危惧I類に指定されています。

歴史と由来

アサクサノリの名は、浅草で製造・販売されていたことに由来しています。この海藻は、江戸時代には既に重要な食材であり、多くの人に利用されていました。1897年にKjellmanが日本の乾海苔製品を基にしてPorphyra teneraを記載し、岡村金太郎によって「アサクサノリ」という和名が付けられました。その後、分類の改定が進み、2011年にはピロピア属に移され、2020年には新たにネオピロピア属に再分類されました。これらの変更はアサクサノリの系統が、現在主に養殖されているスサビノリに近いことを示しています。

特徴

アサクサノリは、葉状体が楕円形から線状披針形をしており、一般的には7cmから24cm、最大で50cmに達することもあります。色は褐色から赤褐色で、特に基部が青緑がかる特徴があります。この海藻は1細胞層を形成し、秋から初春にかけて成長し、12月から3月号にかけて繁殖を行います。

雌雄同株個体と雄性個体があり、雌雄同株個体では精子嚢が線状になります。受精後、果胞子が形成され、貝殻などに着生していきます。成長した果胞子は、夏に殻胞子を放出し、新たな葉状体を形成する仕組みを持っています。

分布と生態

アサクサノリは主に東アジアに分布し、北は北海道南部から南は九州南部まで見られますが、養殖が古くから行われていたため、正確な自然分布は不明です。特に内湾や河口周辺の干潟で見られるこの海藻は、潮間帯の環境変化に影響を受けやすく、近年はその数が急減しています。

保全状況

アサクサノリは、日本の環境省のレッドリストで1997年から2020年にかけて絶滅危惧I類に評価されています。調査によると、2000年代前半には東京湾内の個体群が絶滅したと考えられていましたが、その後、多摩川河口域で少数の個体が確認されています。DNA解析の結果、スサビノリとの自然交配の雑種も存在することが分かり、アサクサノリ内には4つの遺伝的クラスターが存在します。

人間との関わり

アサクサノリは、日本の歴史において非常に古くから食用とされ、江戸時代には東京湾での採取が盛んに行われました。特に、「浅草海苔」として市場に流通するようになり、さまざまな製品が作られました。自然のアマノリを養殖する方法が発展し、江戸時代には、ひびを立てての養殖技術が一般化しました。

『毛吹草』や『本朝食鑑』などの文献には、この海苔に関する記載があり、当時の人々がどれほどアサクサノリを重視していたかがうかがえます。

現在と未来

21世紀に入ると、養殖種の多様化や付加価値のある種の研究が進められており、アサクサノリ養殖の復活も試みられています。三重県の桑名市での養殖は、その好例となっており、現在ではDNA鑑定によって「伊勢あさくさ海苔」として高い評価を得ています。アサクサノリの復活に向けた取り組みが進められる中で、過去の伝統を再評価する動きも強まっています。

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