アザーズの戦い (1030年)

アザーズの戦い（1030年）

1030年8月、シリアのアザーズ近郊で、ビザンツ帝国とアレッポのミルダース朝の間で行われた戦いです。この戦いは、長年にわたる両勢力の対立が背景にありました。

背景

10世紀以降、アレッポはビザンツ帝国とアラブ勢力の係争地でした。969年にビザンツがアンティオキアを占領して以降、アレッポに対する保護権を主張していました。しかし、1029年にミルダース朝がビザンツ軍を破ると、ロマノス3世が自ら軍を率いてアレッポに進軍します。

ミルダース朝は和平を打診しますが、ロマノス3世は拒否。暑いシリアでの作戦を強行します。ミルダース朝はベドウィンの騎兵部隊を組織し、ビザンツ軍に対抗しました。

戦闘の経過

両軍はアザーズ近郊で対峙。ミルダース朝軍はビザンツ軍の偵察隊を奇襲し、野営地を攻撃して補給を妨害しました。これにより、ビザンツ軍は食糧と水不足に苦しみ、反撃も失敗。

8月10日、ビザンツ軍は撤退を開始しますが、アルメニア人傭兵が略奪を始めたことで混乱が生じます。ミルダース朝軍はこの隙を突いて攻撃を仕掛け、ビザンツ軍を打ち破りました。

戦いの後

ミルダース朝は勝利したものの、得られた戦利品を十分に活用できませんでした。ビザンツ軍はその後、アラブ側の要塞を占領し、1031年にはミルダース朝との間で条約を結び、アレッポを再び保護下に置きました。

ロマノス3世の動機

ロマノス3世が自ら出陣した動機については、報復や名誉欲など諸説あります。しかし、ザッカールは、ファーティマ朝によるアレッポ征服を恐れたロマノス3世が、アレッポの独立を維持するために行動した可能性を指摘しています。また、根津由喜夫は、ロマノス3世が自己の権威確立のため、軍事的実績を求めていたという見解を示しています。

戦いの影響

アザーズの戦いでの敗北は、ビザンツ帝国にとって大きな痛手ではありませんでした。しかし、ミルダース朝は勝利を活かせず、最終的にビザンツの保護下に入ることになりました。この戦いは、当時のビザンツ帝国とアラブ勢力の力関係を示す出来事と言えるでしょう。

参考文献

太田敬子「ミルダース朝の外交政策 : 西暦十一世紀のアレッポを中心として」『史学雑誌』第101巻第3号（1992年）
根津由喜夫「<論説>ロマノス三世アルギュロスの蹉跌 : 十一世紀前半のビザンツ皇帝権と政治体制」『史林』第74巻第2号（1991年）
Bianquis, T. "Mirdās". The Encyclopaedia of Islam, New Edition, Volume VII. (1993)
Zakkar, Suhayl. The Emirate of Aleppo: 1004–1094. (1971)

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