ファーティマ朝

ファーティマ朝の概要

ファーティマ朝（ファーティマちょう、アラビア語: الخلافة الفاطمية‎、Al-Khilafah al-Fāṭimīyah）は、909年から1171年まで続いたシーア派のイスマーイール派によって築かれたイスラム王朝です。この王朝は、アッバース朝に対抗する形で設立され、その君主はイスマーイール派の初代イマームであるイスマーイールの子孫を自称しました。王朝名の「ファーティマ」は、預言者ムハンマドの娘であるファーティマに由来し、彼女の夫がシーア派の初代イマームアリーであることから、この名字が付けられました。

歴史的背景と建国

ファーティマ朝の歴史は、8世紀後半に始まります。イスマーイール派は、ジャアファル・サーディクの死後、彼の長男イスマーイールのイマーム位への継承を支持するグループによって形成されました。しかし、イスマーイールの死後にはイマームが存在せず、教派は一時的に衰退しました。9世紀にはイスマーイールの子ムハンマドが現われ、隠れイマームとして救世主の懸念を持ち、人々に教義の普及を図ることになりました。

ファーティマ朝の創始者であるウバイドゥッラー（アブドゥッラー・マフディー）は、899年に自身をイマーム兼マフディーとして宣言し、北アフリカでのイスマーイール派の台頭を目指しました。909年、彼は北アフリカのアグラブ朝を滅ぼし、ファーティマ朝を築きました。

拡大とエジプト支配

ウバイドゥッラーの北アフリカにおける動きは、アッバース朝を滅ぼすための一歩として位置付けられていました。初期の遠征はほとんど成功しませんでしたが、969年には第4代カリフのムイッズがエジプトを征服。これによりカイロが新たな中心地となりました。エジプトにおけるファーティマ朝は、人口の多くを占めるスンナ派との衝突を避けながら、自らの支配を強化しました。

ムイッズの治世下でエジプトは最盛期を迎え、669年にはアズハル・モスクが建立され、学問と宗教の中心地となりました。彼の子アズィーズの時期にも、イスマーイール派の布教活動は積極的に行われ、幅広い地域にその影響力が広がりました。

衰退と滅亡

ファーティマ朝は、991年以降、内部の権力闘争や外部からの圧力によって次第に衰退していきました。特に、10世紀末から11世紀にかけて、スンナ派の勢力が強まる中で、王朝はシリアにおけるセルジューク朝や十字軍との闘争に苦しみました。1169年には、カリフが幼少で権力を持たない中、ザンギー朝のシールクーフが事実上の実権を掌握するに至ります。

1171年、最後のカリフが病死し、サラーフッディーンがエジプトの実権を握るとともに、ファーティマ朝はその歴史に幕を閉じました。新たにアイユーブ朝が成立し、エジプトとシリアの支配権を引き継ぐことになりました。

政治体制

ファーティマ朝の国家体制は、カリフを絶対的な権力者とする強い中央集権的なものであり、その原理はシーア派の教義に基づいていました。この王朝のカリフは、神権的なリーダーとしての権限を持ち、国家は行政機関を通じて効率的に運営されていました。特にエジプトでは、政治的安定を維持するために、有能な宰相を任命し、内政を円滑に進める工夫がされました。

このように、ファーティマ朝はシーア派の教義および独自の政治形態をもって、約260年の間にわたり、北アフリカやエジプトを支配しました。その影響は現在の中東地域にも多くの痕跡を残しています。

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