アザー・サイド・オブ・ジェントルマン

『アザー・サイド・オブ・ジェントルマン』（原題：君子好逑、英題：The Other Side of Gentleman）は、1984年に公開された香港映画です。日本では劇場公開されませんでしたが、CSチャンネルで放映され、一部の映画ファンに知られる作品となっています。主演は、香港を代表する歌手であり俳優でもあるアラン・タム。彼の魅力あふれる演技が光る、一風変わったラブストーリーです。

物語の中心となるのは、アラン・タム演じるアランという青年です。彼はバイクを愛し、女性にもモテるプレイボーイとして周囲から見られています。しかし、そんな彼も知らないところで、ある実験の被験者として選ばれていました。それは、大学の学者たちが取り組む、興味深いテーマに関する研究です。「プレイボーイは、本当に一人の女性を愛することができるのか？」という、当時としては斬新なテーマを扱った実験なのです。

実験のため、アランは愛情機器、いわばラブマシーンのような装置を用いた実験に協力することになります。しかし、実験に適した女性候補を見つけ出すのが難航します。そこで、教授（張國柱）の助手であるジョジョ（ブリジット・リン）が、アランのパートナーとして選ばれることになります。

ジョジョは、アランの心を掴むために、自分のイメージを大きく変えます。彼女はアランに積極的にアプローチし、次第にアランはジョジョに惹かれていきます。アランは、これまで経験したことのない、真の愛情に目覚めていくのです。ジョジョの優しさ、知性、そして内面の魅力に惹かれ、アランの心は彼女だけに向かうようになります。

しかし、二人の幸せな時間は長くは続きません。ある出来事をきっかけに、アランは衝撃の事実を知ることになります。それは、ジョジョが実は教授と婚約しているという事実です。この秘密を知ったアランは、激しい葛藤に苦しみます。愛する女性と、その女性の婚約者である教授との間で揺れるアランの心情は、見る者の心を強く揺さぶります。

本作は、単なるラブストーリーという枠を超えた、人間ドラマでもあります。プレイボーイという枠にとらわれずに、真の愛情を追い求めるアランの姿は、多くの視聴者に共感を与えたことでしょう。アラン・タム、ブリジット・リンといった香港映画界を代表するスターたちの共演も、作品の魅力を高めています。

映画全体を通して、学問的な実験と、人間の感情の複雑さが絡み合い、独特の世界観を作り上げています。愛情機器という設定も、当時としては非常に斬新で、現代社会においても考えさせられる要素を含んでいると言えるでしょう。

『アザー・サイド・オブ・ジェントルマン』は、劇場未公開ということもあり、日本での知名度は高くありません。しかし、その独特のテーマ、そしてスター俳優たちの演技は、一度観れば忘れられない印象を残すでしょう。もし機会があれば、この忘れられた名作に触れてみることをお勧めします。アラン・タムの新たな一面を発見できるかもしれません。また、ブリジット・リンの、可憐さと知性を兼ね備えた演技にも注目です。脇を固める俳優陣も、それぞれ存在感を放ち、物語をより豊かに彩っています。この映画は、単なる恋愛映画にとどまらず、人間の心の機微を繊細に描いた、見応えのある作品と言えるでしょう。

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