アシッドジャズ

アシッドジャズ：イギリスのクラブシーンから生まれたジャズ文化

アシッドジャズは、1980年代にイギリスのクラブシーンから誕生した、ジャズを基調とした音楽ジャンルです。ジャズファンクやソウルジャズの影響を強く受け、多様な音楽要素を融合した独特のサウンドが特徴です。単なる音楽ジャンルにとどまらず、レコードレーベル名としても用いられ、その独特の文化を形成しました。

アシッドジャズの起源：ロンドンのクラブシーン

アシッドジャズの起源は、1980年代初頭のロンドン、特にカムデンのクラブ「Electric Ballroom」にまで遡ります。DJポール・マーフィーが開催した「Jazz Room」というジャズレコード選曲イベントが、その火付け役となりました。

その後、ロンドンのソーホー地区にある「The Wag Club」に移転した「Jazz Room」は、ジャイルス・ピーターソンやバズ・フェ・ジャズといった、後にアシッドジャズシーンを牽引するDJを輩出しました。マンチェスターのクラブ「Berlin」や「Ritz」でも同様のジャズイベントが開催され、ジャズに合わせて踊る文化が醸成されていきました。

1985年には、サイモン・ブース率いるワーキング・ウィークがアルバム『ワーキング・ナイツ』を発表。このアルバムに収録された「Stella Marina」が、アシッドジャズとして最初に制作された楽曲だとする見解もあります。

クリス・バングスとジャイルス・ピーターソンによるジャズイベント「Special Branch」や「Mambo Madness」も、クラブシーンにおけるジャズの隆盛に貢献しました。「Special Branch」は、スペインのイビサ島で開催されるほどに成長しました。

1986年、ロンドンの「Dingwalls」で開催された「Talkin' Loud and Saying Something」というイベントは、ジャズムーブメントの定着に大きな役割を果たしました。

1988年、ファッション雑誌『I.D.』がクリス・バングスやジャイルス・ピーターソンらを特集したことで、アシッドジャズはさらに注目を集め、1990年代にはイギリス全土に広がりを見せました。 音楽雑誌『Straight No Chaser』も、アシッドジャズを広める上で重要な役割を担いました。

アシッドジャズのサウンド：多様な音楽要素の融合

アシッドジャズのクラブイベントでは、ジャズファンクやソウルジャズが中心にプレイされました。ジェームス・ブラウンなどのファンク、ハンク・モブレーやウッディ・ハーマンといったスタンダードジャズ、ボサノヴァやブラジリアン、ブーガルーなどのラテンジャズ、そして時代と共にヒップホップやハウスミュージックなども取り入れられました。

アシッドジャズという名称の由来

アシッドジャズという名称の由来には諸説ありますが、クリス・バングスが1988年、ジャイルス・ピーターソンと共にDJをしていた際に、プロジェクターに映し出された「ACID」という文字を見て思いついたという説が有力です。 選曲されていた楽曲については、アート・ブレイキー、サブー・マルティネス、ミッキー&ソウル・ジェネレーション、ジェームス・ブラウンなど、様々な説が存在します。

主要なレコードレーベル：アシッドジャズ・レコーズとトーキング・ラウド

アシッドジャズの発展には、レコードレーベルの存在も欠かせません。1987年、エディ・ピラーとジャイルス・ピーターソンによって設立された「アシッドジャズ・レコーズ」は、ジャミロクワイやインコグニートといった、アシッドジャズを代表するアーティストを輩出しました。ジャイルス・ピーターソンはその後、「トーキング・ラウド」レーベルを設立し、数多くのヒット曲をリリースしました。

アシッドジャズと関連する音楽ジャンル

アシッドジャズは、ジャズファンク、ソウルジャズ、ファンク、ヒップホップ、ボサノヴァ、ブラジリアンミュージック、そして日本のジャズなど、様々な音楽ジャンルと深く関わってきました。特にヒップホップとの融合は、アシッドジャズに新たな魅力をもたらしました。 また、モッズ文化とも繋がりを持ち、音楽性だけでなくファッションやライフスタイルにも影響を与えました。

日本のジャズとアシッドジャズ

日本のジャズ、特にジャズファンクやフュージョンは、イギリスのアシッドジャズシーンに大きな影響を与えました。渡辺貞夫、向井滋春、日野皓正といった日本のジャズミュージシャンたちの作品は、イギリスのクラブで高く評価され、アシッドジャズDJたちの選曲に頻繁に取り上げられました。

まとめ

アシッドジャズは、イギリスのクラブシーンから生まれた、多様な音楽要素を融合した独自のジャズ文化です。その起源、主要レーベル、関連する音楽ジャンル、そして日本との関わりを知ることで、アシッドジャズの奥深さをより深く理解できるでしょう。

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