アシモフのミステリ世界

アシモフのミステリ世界

『アシモフのミステリ世界』（Asimov's Mysteries）は、SF界の巨匠アイザック・アシモフが1968年に発表したSFミステリ短編集です。SFとミステリーという、一見すると異質なジャンルを融合させ、独自の作風を確立したアシモフの魅力が詰まった作品集となっています。

概要

アシモフはミステリー作家としても活躍し、『鋼鉄都市』などのSFミステリの第一人者として知られています。本作は、彼のSFミステリ短編を集めたもので、個性的なキャラクターや奇抜な設定、そして論理的な推理が展開されます。

収録作品には、乗り物嫌いの地球外生物学者ウェンデル・アース博士が難事件を解決する人気シリーズや、ハードボイルドな雰囲気が漂う作品、そしてアシモフの作家としての原点であるデビュー作とその20周年を記念した続編などが含まれています。

収録作品

歌う鐘

月面で採取される貴重な「歌う鐘」を巡る事件を、アース博士が解決します。密室状態での犯罪、重力の変化を利用したトリックなど、SF的な設定を巧みに利用したミステリーです。

もの言う石

宇宙船が持ち帰った巨大なケイ素生物「シリコニー」が、ウラニウム鉱山の隠された場所を知っているという設定で、アース博士がその謎を解き明かします。シリコニーの言葉の意味、そしてロバートQに隠された秘密とは？

その名はバイルシュタイン

大学の図書館で発生した毒殺事件。被害者は司書の女性で、容姿が瓜二つの同僚が容疑者として浮上します。ドイツ訛りの毛皮商人が事件の鍵を握る中、アース博士は化学知識を駆使して真犯人を見抜きます。それは意外な人物でした。

やがて明ける夜

地球で開催された学会に集まった、かつての大学院の同級生たち。そのうちの一人が殺害され、彼の発明の資料も焼却されます。アース博士は、フィルムの隠し場所に注目し、犯人を特定します。犯人の動機は、嫉妬と独占欲でした。

金の卵を産むがちょう

金の殻に覆われたガチョウの卵を巡る奇妙な物語。農務省の男が調査に乗り出すと、親ガチョウの肝臓で金が生成されていることが判明します。しかし、なぜガチョウが金の卵を産むのか、その謎は未だ解き明かされていません。

死の塵

他人のアイデアを盗用してのし上がってきたルーウェス博士が殺害されます。容疑者は、博士に成果を奪われたファーリイ。彼はある仕掛けを用いて博士を殺害しようとしますが…。

ヒルダぬきでマーズポートに

妻のヒルダが不在のマーズポートで、羽を伸ばそうとする男。しかし、彼は予期せぬ事態に巻き込まれます。ハードボイルドな雰囲気が漂う、スリリングな物語です。

真空漂流

宇宙船が事故に遭い、宇宙空間に漂流する3人の生存者たち。彼らは限られた資源を頼りに、生還を目指します。アシモフのデビュー作であり、その才能の萌芽が感じられる作品です。

記念日

「真空漂流」から20年後、奇跡的に生還した3人の男たちが再会します。彼らは、難破した宇宙船に隠された秘密を解き明かそうとします。デビュー作をミステリーとして再構築した、意欲的な作品です。

死亡記事

自分の死亡記事を読んでみたいと願う科学者ランスロット。彼は時間旅行の研究を利用し、自らの死を偽装しようとします。しかし、彼の計画は思わぬ方向に進んでいき…。

スター・ライト

老人が長年かけて準備した「クリリウム」と銀河星図を奪い、宇宙へ飛び立つトレント。しかし、彼はあることに気づき、絶望します。

鍵

月面で発見された異星人の装置を巡る物語。その装置は、人間の感情を増幅する力を持っていました。アース博士は、残されたメモを解読し、装置の隠し場所を突き止めます。

反重力ビリヤード

反重力を発見したブルームが、その公開実験としてビリヤード勝負をブリス教授に申し込みます。しかし、実験は思わぬ結果を招き…。

まとめ

『アシモフのミステリ世界』は、SFとミステリーの融合という、アシモフならではのスタイルが堪能できる作品集です。個性的なキャラクター、奇抜な設定、そして論理的な推理が、読者を魅了します。SFミステリーの入門書としても最適な一冊です。

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