アシャ・パレク

アシャ・パレク（Asha Parekh、1942年10月2日生）は、インド映画界、特にヒンディー語映画の世界で約40年にわたり輝きを放った伝説的な女優である。そのキャリアは85本を超える作品に及び、後年は映画監督やプロデューサーとしても活動した。その功績は高く評価され、フィルムフェア賞を二度受賞したほか、インド政府からのパドマ・シュリー勲章（1992年）、インド映画界最高の栄誉とされるダーダーサーヘブ・パールケー賞（2022年）など、数々の栄誉に輝いている。2017年には自身の半生を綴った自伝『The Hit Girl』を上梓した。

彼女は1942年10月2日、ボンベイ（現ムンバイ）郊外のサンタクルズで、ヒンドゥー教徒の父バチュバーイー・パレクと、ボーリー・ムスリムの母スダー（サルマ・パレク）という異なる宗教背景を持つグジャラート出身の中流家庭に生まれた。幼い頃から母親の後押しで古典舞踊を習得し、その才能を開花させた。

まだ少女だった頃、彼女が出演した舞台を観た著名な映画監督ビマル・ロイはそのダンスに感銘を受け、『Maa』や『Baap Beti』といった自身の監督作に彼女を子役として起用した。「ベイビー・アシャ・パレク」としていくつかの映画に出演したが、『Baap Beti』の興行不振を機に、一度は学業に専念するため映画界を離れた。しかし、16歳を迎えた頃、再び映画の世界を目指し、『Goonj Uthi Shehnai』のオーディションに臨むも、「スクリーンでの存在感に欠ける」と判断され、主役の座を逃してしまう。だが、そのわずか8日後、サシャダール・ムカルジー、スボード・ムカルジー、ナーシル・フセインといった映画関係者の目に留まり、シャンミー・カプール主演の『Dil Deke Dekho』のヒロインに抜擢されるという劇的な転機が訪れる。この作品での成功が、アシャ・パレクをスター女優へと押し上げたのである。

『Dil Deke Dekho』以降、彼女は特にナーシル・フセイン監督作品の常連となり、『Jab Pyar Kisi Se Hota Hai』『Phir Wohi Dil Laya Hoon』『Teesri Manzil』『Baharon Ke Sapne』『Caravan』など、立て続けにヒット作に出演した。キャリア初期は、活発で魅力的な女性、あるいは優れたダンサー、おてんば娘といった役柄で人気を博したが、ラージ・コースラー監督の『Do Badan』や『Chirag』で演じた悲劇のヒロイン役を機に、シリアスな演技力も高く評価されるようになった。特に『Chirag』での演技はフィルムフェア賞主演女優賞にノミネートされ、『Main Tulsi Tere Aangan Ki』では助演女優賞にノミネートされるなど、批評面でもその実力を認められるようになる。さらに、シャクティ・サマンタ監督作品『Pagla Kahin Ka』や『Kati Patang』では、より複雑で感情的な役柄を演じ、『Kati Patang』ではついにフィルムフェア賞主演女優賞を獲得した。続く『Udhar Ka Sindur』でも助演女優賞にノミネートされるなど、その演技の幅広さと深さを示した。

1960年代後半から1970年代前半にかけて、アシャ・パレクは最も出演料が高い女優の一人であり、『Box Office India』のトップ女優リストには1966年から7年連続でランクインし、1967年と1968年には頂点に立った。当時の彼女の人気は絶大で、バンドスタンド・プロムナードには彼女の手形が飾られるほどのアイコン的存在だった。彼女はデーヴ・アーナンド、シャンミー・カプール、ラージェーシュ・カンナーといった同時代のトップスターたちと数多く共演し、スクリーンで輝きを放った。ヒンディー語映画での成功に加え、1963年にはグジャラート語映画『Akhand Saubhagyavati』で大きなヒットを飛ばし、他にもパンジャーブ語やカンナダ語の作品にも出演するなど、多方面で活躍した。

しかし、1970年代に入ると、ムムターズやシャルミラ・タゴールといった新しい世代の女優たちが台頭し、主演女優としての機会は徐々に減少していった。キャリア後半は、義姉妹や母親といった助演としての役柄が増え、アミターブ・バッチャンと共演した『Kaalia』などが代表作として挙げられる。しかし、アシャ・パレク自身はこの時期を「キャリアの中で最も厄介だった」と振り返っており、自身の演技の幅が限定されることへの葛藤があったことを示唆している。

この状況を受け、友人たちの勧めもあり、彼女は活動の場をテレビへと広げ、監督業に進出した。1990年代にはグジャラート語のテレビドラマ『Jyoti』で監督デビューを果たし、その後は自身の製作スタジオ「アクルティ」を設立して、『Palash ke Phool』『Baaje Payal』『Kora Kagaz』『Dal Mein Kaala』など、数々のテレビドラマを製作・プロデュースした。また、映画界の発展にも貢献し、1994年から2000年まで映画芸術家協会の会長、1998年から2001年まで中央映画認証委員会の委員長という重要な役職を歴任した。

1990年代以降、映画では年配の役柄が多くなったため、アシャ・パレクは次第に映画界から距離を置くようになった。その後は、自身のルーツである舞踊活動、慈善事業、バンガロー経営など、多岐にわたる活動に専念した。女優としての最後の出演は、2008年にリアリティ番組『Tyohaar Dhamaaka』で審査員を務めたことである。

私生活においては、1970年代に複数の結婚の申し込みを受けたものの、いずれも受けず、生涯未婚を貫いている。自伝『The Hit Girl』の中で、既婚者であったナーシル・フセイン監督との間に恋愛関係があったことを初めて公に認めた。しかし、互いの家族を尊重し、結婚という形には進まなかったと語っている。ナーシルが妻を亡くしてからは公の場に姿を見せなくなり、生前最後に会ったのは彼の死の前日だったという。また、長年交際した男性の存在や、アメリカ在住の教授との婚約が破談になった経験なども明かしているが、その詳細は多くを語っていない。一時期は養子を迎えようとしたが、子供に先天的な問題があったことから医師の反対を受け、断念せざるを得なかったというエピソードもある。

アシャ・パレクはインド映画史上、最も偉大な俳優の一人として揺るぎない地位を築いている。2009年には第40回インド国際映画祭で芸歴50周年を記念して表彰され、2022年には『アウトルック』誌の「ボリウッド女優ベスト75」に選出された。また、第53回インド国際映画祭では、彼女の功績を讃える特別回顧展が開催され、主演作3本が上映された。批評家たちは彼女を「他の女優たちとは一線を画す存在」、「スターダムを超越した、中身の濃い女性」（『フィルムフェア』）、「銀幕を飾った偉大なムービースターの一人」（『ファーストポスト』）と称賛している。『ザ・ステイツマン』は彼女を「ヒンディー語映画の黄金時代に数々のヒット作を生み出し、ボリウッドのジュビリー・ガールの名を得た」と評し、『インディアン・エクスプレス』は彼女が「快活で、ファッショナブルで、陽気なダンサー、そしてグラマラス・ガール」といったイメージを超え、型破りな役柄も演じ分けた努力の人であることを指摘している。その多才な才能と貢献により、アシャ・パレクは今もなお、インド映画のアイコンとして多くの人々に記憶されている。

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