アシュタラク

アシュタラクは、アルメニアの首都エレバンから北西へ約20km、カサグ川のほとりに位置する工業都市です。アラガツォトゥン地方の中心都市であり、人口は約3万人を擁しています。エレバン、ギュムリ、ヴァナゾルというアルメニアの主要都市を結ぶ幹線道路の交差点として、重要な役割を果たしています。

歴史と伝説

アシュタラクには、古くから語り継がれる悲しい恋の物語があります。その昔、アシュタラクには美しい三姉妹が暮らしており、三人ともサルギス王子という男性を愛していました。姉妹たちは、末妹を幸せにしたい一心で、次女はアプリコット色、長女は赤いドレスを身にまとい、峡谷に身を投げました。その後、二人の後を追って、末妹も白いドレスを着て同じように命を絶ったとされています。王子は、悲しみに暮れ隠遁生活を送るようになり、峡谷の縁に三つの教会を建て、姉妹のドレスの色にちなんでそれぞれを命名したと伝えられています。

これらの教会の中でも、最も保存状態が良いのがカルムラヴォル教会です。7世紀に建造されたこの教会は、「赤みがかった」という意味の名前を持ち、中央部が十字形をしており、ドームは赤色とオレンジ色に塗られています。八角形のドラムも特徴的です。残りの二つの教会は、「白みがかった」という意味のスピタカヴォル教会と、「オレンジ色をした」という意味のトシラナヴォル教会です。スピタカヴォル教会は5世紀から6世紀にかけて、トシラナヴォル教会は13世紀から14世紀にかけて建てられたと言われ、この二つは同時期に発見されたと伝えられています。

アシュタラクには、他にも二つの歴史的な教会があります。聖サルギス教会は、19世紀に宗教改革以前の建造物を改築したもので、峡谷を見下ろす場所に位置し、前述の三教会を望むことができます。近年、外壁の大部分が改装されました。街の中心部にある聖マリアン教会は、アシュタラクで最大の教会です。外観は長方形に見えますが、内部は十字の形をしています。こちらも八角形のドラムが特徴です。

文化的遺産と景観

街の見どころとして、もう一つ挙げられるのが、聖サルギス教会の真下の峡谷、カサグ川に架かる橋です。1664年に完成したこの橋は、三つのアーチからなる独特の形状が特徴的です。この橋は、歴史的な景観の一部として、訪れる人々に深い印象を与えます。

ゆかりの人物

アシュタラクは、多くの著名な人物を輩出しています。詩人のスムバト・シャハジーズ、学者のノライル・シサキアン、詩人のゲヴォルグ・エミンなどが、この地とゆかりがあります。

スポーツ

サッカークラブのカサフ・アシュタラクが、この街を本拠地としています。このクラブは、アシュタラクのスポーツ文化を支える重要な存在です。

アシュタラクは、伝説と歴史が織りなす美しい街です。中世からの教会や橋、そして、悲しい恋の物語は、訪れる人々に深い印象を与えます。アルメニアの歴史と文化を肌で感じることができる場所として、訪れる価値があるでしょう。

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