アジャックス (フランスの競走馬)

アジャックス：フランス競馬史に輝く名馬

アジャックス（1901年 - 1915年）は、20世紀初頭のフランス競馬界を代表する競走馬としてその名を刻んでいます。フランス競馬史に名を残す名オーナー、エドモン・ブラン氏が所有し、名伯楽ロバート・デンマン調教師の指導の下、類まれな競走成績と繁殖能力で大きな成功を収めました。

アジャックスの父は、エドモン・ブラン氏によって英国から輸入された三冠馬フライングフォックスです。アジャックスはその初年度産駒として誕生し、早くからその素質の片鱗を見せました。2歳時にはサンファルマン賞を制し、3歳になると頭角を現し始めます。

3歳シーズンは、アジャックスにとってまさに黄金時代となりました。ノアイユ賞を皮切りに、当時フランスの3歳重賞として最も権威のあるリュパン賞、ジョッケクルブ賞（フランスダービー）、そしてパリ大賞と主要レースを全て制覇。驚異の5戦5勝という輝かしい成績を収めました。しかし、調教中の怪我により、惜しまれつつも競走馬としてのキャリアに幕を閉じます。

競走馬を引退したアジャックスは、1905年からエドモン・ブラン氏のジャルディイ牧場で種牡馬となりました。すると、その繁殖能力もまた、並外れたものだったことが明らかになります。アジャックスの産駒は、数々の重賞競走を制覇するほどの活躍を見せました。

最初の世代から、1908年のモルニ賞と1909年のオカール賞を制したメアリ、1909年のディアヌ賞（フランスオークス）優勝馬ユニオン、そして同年バーデン大賞を制したアザリーなど、そうそうたるメンバーが輩出されました。翌年には、サブロン賞を制したセルダやマンチェスターカップを制したマラヤクスなど、活躍馬が続々と誕生しました。スペインのグラン・クリテリウム・ド・サンセバスチャンを勝ったグッドラックも、アジャックスの産駒です。

しかし、1914年に勃発した第一次世界大戦により、フランスでの競馬は大きな影響を受けました。アジャックス自身も、戦争の影響が色濃く残る中、1915年に早逝してしまいます。アジャックスの晩年の産駒であるテディは、戦争を逃れるようにスペインで競走生活を送りました。そして、サンセバスチャン大賞やスペイン・セントレジャーに勝利し、種牡馬としても大成功を収めます。テディの活躍は、アジャックスの血統の偉大さを改めて証明するものでした。

アジャックスの血統背景にも注目すべき点があります。母父であるClamartの父には、SaumurとSoukarasの2頭が挙げられています。これは、母馬Princess Catherineに両馬が同一シーズンに交配されたことに由来します。そのため、血統表では父馬の欄に「SaumurまたはSoukaras」と記載されるのが一般的です。しかし、インターネット上のデータベースでは、どちらか一方しか掲載されないことが多いのが現状です。

アジャックスという馬名は、ギリシア神話に由来しています。ちなみに、オーストラリアにも同名異馬のアジャックスが存在し、こちらも歴史的名馬として知られています。アジャックスの生涯と功績は、フランス競馬史のみならず、世界の競馬史においても重要な一頁を飾るものと言えるでしょう。彼の血統は、今もなお多くの競走馬に受け継がれ、その偉大さを物語っています。

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