アスガード (スターゲイト)

アスガード

アスガードは、SFテレビドラマシリーズ『スターゲイト SG-1』の世界観における、アイダ銀河出身の極めて発達した好意的な異星種族です。彼らは「四大種族」として知られる同盟の一員であり、スターゲイトの世界において最も進歩した文明の一つとされています。その技術レベルは、大部分が超越存在となったエンシェントに次ぐ高さであり、ノックスや恐らくファーリングスといった同盟種族のみがライバル視しうる存在です。かつて銀河系で勢力を誇ったゴアウルドはアスガードを敵とは見なさず、その存在を畏れていました。しかし、アスガードは後にオーライという新たな脅威に直面することになります。

歴史

アスガードの起源は、アイダ銀河に位置する惑星オサラやハラに移住したことに遡ります。彼らはかつて、現在の姿とは異なる高身長のヒューマノイド型種族でした。有性生殖を行っていましたが、種族の存続が危ぶまれる状況を経て、クローン技術に依存するようになります。これにより数百万年もの寿命を得ましたが、繰り返しクローンを生成した結果、遺伝子が深刻に劣化し、およそ1000年前には有性生殖能力を失いました。

約3万年前、仮死状態のクルーを乗せたアスガード船が母星を離れましたが、ナビゲーションシステムの損傷により銀河間を漂流し、最終的に天の川銀河系に流れ着きました。この船は後にアスガードの科学者によって発見され、完全に保存された彼らの祖先が発見されます。

約1万年前、アスガードはエンシェント、ノックス、ファーリングスと共に銀河系の「四大種族同盟」を結成しました。

過去1万年において、アスガードが警戒する中でもゴアウルドは銀河系で台頭し、人間を宿主とする寄生を開始します。アスガードはこれに憤りを感じつつも、エンシェントのような人間性の潜在能力を認めました。ゴアウルドとの戦争が勃発しましたが、アイダ銀河におけるより大きな脅威に対処するため、アスガードは撤退を余儀なくされます。

銀河系をゴアウルドに明け渡すことを嫌ったアスガードは、様々な惑星の人類を解放し、移住させました。そして、自らの高度な科学技術を「神の魔術」としてしか理解できない彼らに対して、守護神として振る舞います。これが地球における北欧神話の起源となりました。保護下の惑星の安全を確保するため、アスガードはゴアウルドと不可侵協定を締結します。これは、アスガードが特定の利益をゴアウルドに認め、引き換えに人間への危害を停止させるという内容でした。この条約は、より強力なアスガードの怒りを買いたくないゴアウルドの大多数によって遵守されました。しかし、実際にはアスガードはレプリケーターとの戦いに忙殺されており、この条約は武力を誇示するハッタリの側面が強かったのです。

レプリケーターとの苛烈な戦い

アスガードがゴアウルドから地球や銀河系を守りきれなかった最大の要因は、レプリケーターというさらに強大な敵との戦争でした。レプリケーターはアスガードのエネルギー兵器に迅速に適応するため、戦線は膠着状態に陥ります。一方で、単純な化学反応を用いる地球人の質量兵器は、原始的でありながらレプリケーターが適応しにくいことが判明しました。このため、アスガードは地球人の「愚かな考え」に助けを求めることがしばしばありました。カーター少佐の着想により、最新のアスガード船「オニール号」がハイパースペース内で自爆し、レプリケーターに打撃を与えました。レプリケーター壊滅後にはゴアウルド打倒への協力が約束されます。

アスガードはSG-1の協力を得て、レプリケーターを時間膨張場に誘い込むことに成功しましたが、2年後にレプリケーターは脱出し、アスガードの新たな母星オーリラを攻撃しました。オーリラに降り立ったレプリケーターの中には、人間型の「フィフス」もいました。エンシェントの知識を得たオニール大佐は、レプリケーターの通信網を破壊する武器を開発。トールがその巨大版でオーリラのレプリケーターを無力化しますが、フィフスを含む一部は逃亡します。

生き残ったレプリケーターは銀河系へと侵攻しました。対レプリケーター武器に適応した彼らに対し、アスガードはトールを送るのが精一杯でした。レプリケーターが最終的に滅ぼされたのは、地球人とゴアウルドのバールが協力し、惑星ダカラのエンシェント兵器を起動。スターゲイトネットワークを介して銀河系全体のレプリケーターを原子レベルで破壊した時でした。銀河系外に少数の生存者がいる可能性も示唆されましたが、連絡手段はないと推測されました。

絶滅、そして技術の継承

レプリケーターとの戦いを終えた後、アスガードはオーライという新たな敵に直面します。シーズン9最終話では、オーライ艦隊との戦闘で支援を行いますが、これは失敗に終わります。

『スターゲイトSG-1』シリーズ最終話「Unending」で、アスガードは地球に対し、彼らが長年続けてきたクローニングが生んだ遺伝的な欠陥が修復不可能となり、種族全体に広がった致死性の遺伝病を治す手立てがないことを告げます。アスガードは苦しみながら死ぬことを避け、故郷オーリラと共に滅びる道を選択しました。

彼らは、築き上げてきた技術と、クローン技術という過ちの歴史が自らと共に失われることを、そして後に悪用されることを望みませんでした。このため、「宇宙四大種族」に続く「第五の種族」となりうる地球人に、アスガードの全ての知識と技術を託すことを決定します。アスガード内には反対意見もありましたが、大多数はこの決定を支持しました。

地球の宇宙戦艦オデッセイにアスガードの先進技術がインストールされた直後、技術を感知したオーライ船がオーリラ付近に現れ、オデッセイを攻撃します。しかし、インストールされたばかりのアスガード技術により、オデッセイはオーライ船の攻撃を防ぎ、無敵とされたオーライ船を一隻撃沈することに成功しました。

技術を託したアスガードたちはオーリラに戻り、SG-1が見守る中、惑星の爆発と共にアイダ銀河から姿を消しました。ただし、『スターゲイトアトランティス』最終シーズンには、遠い昔にペガサス銀河へ移住し、禁忌とされた人体実験によって生き延びたアスガードが登場しますが、彼らは地球の探索チームと敵対することになります。

特徴と社会

アスガードはかつてヒューマノイドでしたが、クローン技術への依存により外見が変化しました。現在の彼らは、地球人がロズウェル事件で見たエイリアンと酷似した姿をしています。トール自身も、ロズウェルで見られたのが彼らであることを示唆する発言をしています。彼らは自らの意識を新たなクローン体に移すことで生きてきましたが、遺伝子劣化によりその限界を迎えたのです。長年のクローニングは、かつてエンシェントが行ったような「高みへの昇昇華」という進化の道も閉ざしてしまいました。

アスガードの言語は、地球のゲルマン語派に影響を与えたと推測されています。彼らは基本的な全ての言語を理解し、話す能力を持っています。

ゴアウルドが人間を神として支配したことに対抗するため、アスガードも未開であった人類に神として接し、自らの技術を「魔術」として提供しました。人間と接触する際は、通常ホログラムを用いて人間の姿をとります。アスガードという種族名は、北欧神話の神々の国「アスガルド」に由来し、神話に登場する一部の神々はアスガードをモデルにしています。

アスガード最高評議会は、種族を統治する機関です。その規模や正確な権限は不明ですが、少なくとも7名の常務委員がおり、種族全体の重要な決定や、地球（タウリ）との惑星保護協約などの交渉を行いました。彼らはホログラム投影機を用いて会議を行い、オニール大佐もこのシステムを通じて彼らと交流しました。

アスガードは地球との接触後、特に「惑星保護協約」という形で大規模な援助を行いました。これはアスガードが未開惑星と認めた惑星へのゴアウルドの干渉を禁じるもので、数千年にわたりアスガードとゴアウルド間の微妙な均衡を保つ助けとなりました。ゴアウルドによる地球総攻撃の計画を察知したアスガードは会合を開き、地球をこの協約の対象と認めさせました。協約は「ゴアウルドの支配者層による地球への攻撃禁止」などを定め、アヌビスのような一部のゴアウルドに破られることもありましたが、大多数のゴアウルドはアスガードを恐れて中立を保ったため、一定の効果を発揮しました。この協約は地球以外にも22の惑星に適用され、保護されていました。

戦術とテクノロジー

アスガードの戦術については、その圧倒的な技術力により敵を制圧してしまうため、詳細はあまり知られていません。対等に戦えるのはレプリケーターやオーライ、あるいはノックスとファーリングスのみです。彼らは策略を用いることにも長けており、惑星保護協約のように、直接介入できない状況でも武力を背景にしたハッタリで敵を牽制することもありました。また、トールの船自爆のように、戦闘において自己犠牲を厭わない面もあります。しかし、あまりに発達した思考ゆえに、原始的な手段で敵を打ち負かす戦略立案には問題を抱えていました。カーター少佐のような地球人にレプリケーター対策を依頼したのもそのためです。

アスガードは強力な戦艦を保有していますが、基本的に好戦的な種族ではなく、攻撃的な目的での技術使用には消極的でした。

アスガードの技術水準はゴアウルドを遥かに凌駕しています。クローキング技術も保有していますが、ゴアウルドほど多用しませんでした。彼らと同等の技術力を持つのはノックス、ファーリングス、エンシェント、オーライ、そして技術を受け継いだ地球人です。彼らの船は数分で数千光年を航行でき、転送装置やホログラム投影機などの高度な技術を使いこなします。アスガードはビリスクナー級クルーザー、ダニエル・ジャクソン級科学船、オニール級戦艦といった艦船を運用していました。オニール級の指向性エネルギー兵器はオーライの母船を数発で破壊し、シールドはオーライの攻撃にも耐える防御力を見せました。

絶滅前、アスガードの全ての技術と知識は地球へ託されました。地球はこれにより、銀河における技術力を大きく向上させ、新たな脅威に対抗する力を得たのです。

もう一度検索