アスクレーピオス

アスクレーピオス — 医神の物語

アスクレーピオス（Ἀσκληπιός）は、ギリシア神話に登場する著名な医者であり、医神として非常に重要な存在です。ラテン名ではアエスクラーピウス（Æsculapius）とも呼ばれ、古代から現代に至るまで医学の象徴の一つとして崇拝されています。特に、彼が亡者を蘇らせる技術を持っていたことが多くの人々に知られており、医学の神格化につながっています。アスクレーピオスの肖像は、ギリシャの旧10000ドラクマ紙幣にも描かれており、世界保健機関（WHO）のシンボルの一部でもある杖のモチーフは「アスクレピオスの杖」として広く使われています。

神話の起源

アスクレーピオスは、太陽神アポロンと人間の女性コローニスの子供として生まれました。コローニスはテッサリアのラピテース族の王の娘であり、彼女がアポロンとの関係を持っている間、アポロンはカラスを使者として配していました。しかし、カラスがコローニスの浮気を告げたことから事態は悪化し、怒った女神アルテミスが彼女を射殺してしまいました。アポロンはカラスを罰し、言葉を奪い、羽毛を黒く染めました。このカラスの冒険は、現在の「からす座」の名の由来とも言われています。

コローニスは妊娠しているとも知らずに命を落とし、アポロンは彼女の胎児を救うべく、賢者ケイローンに託しました。この胎児がアスクレーピオスであり、以降彼はケイローンのもとで特に医術に秀でた才能を示して育ちました。

医学の才能

アスクレーピオスは医学の技術が卓越し、師であるケイローンを超えるほどの技術を持つようになりました。彼はアルゴー船探検隊にも参加し、後には医術を駆使して死者を蘇らせる能力を身に付けました。メドゥーサの血から得た蘇生力により、彼は多くの人物を生き返らせました。これには故リュクールゴスやテーセウスの息子ヒッポリュトスなど、多くの英雄が含まれます。

その一方で、彼の行為は冥界の王ハーデースを怒らせ、彼はゼウスに苦情を申し立てます。ゼウスは人間の医術による助け合いを好まず、アスクレーピオスを雷により打ち殺します。しかし、その業績を称えられ、アスクレーピオスは天に昇り、へびつかい座として神の席につくことになります。

医学の守護神としての地位

古代ギリシアでは病院のことを「アスクラピア」と呼び、アスクレーピオスが病の治癒を見守る存在でした。彼の子供たちも医術に関わっており、例えば息子のマカーオーンとポダレイリオスはトロイア戦争でも活躍しました。一方、彼の四人の娘たちには治癒の女神イアーソーや健康の女神ヒュギエイアがいます。ヒポクラテスも彼の子孫とされています。

アスクレーピオスの杖

彼に結びつけられる象徴として「アスクレーピオスの杖」があり、これは医療のシンボルとして世界中で認識されています。杖に巻きつくヘビは治癒や再生の象徴とされ、医療従事者にとって重要なシンボルとなっています。

アスクレーピオスは、ただの神話上の存在にとどまらず、現在における医療の理念や象徴としても深い影響を及ぼし続けています。

もう一度検索