アストロン (腕時計)

セイコークォーツ アストロンの歴史

セイコー・アストロン、正式には「セイコークォーツ アストロン35SQ」は、世界で初めてのクォーツ式腕時計として1969年に誕生しました。これにより、時計業界に革命がもたらされ、アストロンはその技術革新の象徴となりました。

初代アストロンの誕生

アストロンの開発は、服部時計店、現在のセイコーホールディングスが行っており、その開発部門である諏訪精工舎が約10年間にわたり努力を重ねてきました。そして、1969年12月25日、東京で発表されました。価格は45万円という当時の中型車1台分に相当するものでしたが、驚くべきことに、発売からわずか1週間で100台が売り切れるという成功を収めました。この成功には、販売価格を38万円に下げようとしたところ、会長の服部正次から「安すぎる」との指摘を受け、そのままの価格で販売を続けたというエピソードが残っています。

初代アストロンには、8192cpsのY形水晶発振器、ハイブリッド集積回路、位相固定式の超小型ステッピングモーターなど、当時の最先端技術が詰まっています。また、一日の誤差は±0.2秒、ひと月に±5秒という高精度を誇っていました。この開発経緯は、NHKのドキュメンタリー番組『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』の第64回で詳しく紹介されました。

40周年記念モデル

アストロンの登場から40年が経った2010年、セイコーはこの記念すべき年を祝うべく、独自のデザインを再現した限定版腕時計をバーゼルフェアで発表しました。日本国内では2010年8月に販売され、多くのファンに支持されました。

新たなアストロンの進化

2012年には、GPS衛星を利用したソーラー腕時計が『セイコー・アストロン』の名称でリリースされ、新たな技術での進化を遂げました。このモデルは、アストロンの伝統を受け継ぎつつ、現代の要求に応える製品として位置づけられました。

50周年記念モデル

2019年には、アストロンの発売50周年を祝うため、限定モデルの複数リリースが行われました。特に注目されるのは、わずか50本だけ生産されたモデルで、その価格は380万円に達します。オリジナルのケースデザインを模したこちらのモデルは、エプソンの「マイクロアーティスト工房」に所属する職人による凝った荒らし彫りの模様が施されています。これにより、アストロンの貴重な歴史がさらに強調されています。

まとめ

セイコークォーツ アストロンは、ただの時計ではなく、技術革新の歴史を映し出す象徴的な存在です。初代のクォーツ式腕時計から、現在までの進化を経て、新たなモデルが次々と登場する中で、その価値はますます高まっています。セイコーのアストロンは、時計ファンだけでなく、技術史に興味のある人々にもとても魅力的な存在といえるでしょう。

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