アスファルト (1929年の映画)

映画『アスファルト』の概要

『アスファルト』（原題: Asphalt）は、1929年に公開されたモノクロのドイツ映画で、著名な監督ヨーエ・マイによる作品です。この作品は、サイレント映画時代の終わりを飾る作品と位置付けられ、1929年のドイツ映画界においてはトーキーの夜明けとなる重要な時期に作られました。映画は特に、作品のビジュアルとストーリーテリングの両方で高く評価され、30年度のキネマ旬報ベストテンではサイレント映画部門で第1位を獲得しています。

ストーリーの概要

物語は、ある宝石店で発生したダイヤモンド強盗事件から始まります。この事件に対応するために現場に出動したのが、交通整理の警官アルバートです。彼は周囲にいた女性の持っていた雨傘からダイヤモンドが隠されているのを発見します。この女性、ダイヤモンドのメリーは実は女賊であり、彼女は貧困から犯罪に手を染めたという背景を持っています。

アルバートは、彼女の言い分を信じて自宅に訪れますが、その際、彼自身の警官としての身分証を落としてしまいます。後日、彼女から小包としてその証明書が届くのですが、これに激怒したアルバートは彼女のもとに返却に行きます。しかし、メリーの心の中には彼に対する愛情が芽生えていました。

その頃、メリーの情夫はパリで銀行強盗を行い逃げてベルリンに向かっていましたが、アルバートと鉢合わせしてしまいます。そこで起こる格闘は悲劇的な結末を迎え、情夫は死んでしまいます。正当防衛にもかかわらず、アルバートは罪の意識に悩まされながらも父親である警部ホルクに相談します。

ホルクは息子の逮捕を決定し、裁判が始まります。法廷で、メリーはアルバートの無罪を証明しようとするものの、自身の身分を明かさなければならないという難しい選択を迫られます。最終的にアルバートは無罪となりますが、メリーは逮捕されてしまいます。彼女の愛情と苦悩が交錯するストーリーは、観る者に深い感情をもたらします。

キャスト

映画には、さまざまな魅力的なキャラクターが登場します。主なキャストには、交通整理の警官アルバート役のグスタフ・フレーリッヒ、アルバートの父であるホルク元警部役のアルバート・シュタインリュック、アルバートの母であるホルク夫人役のエルゼ・ヘラー、女賊ダイヤモンドのメリー役のベティ・アマンがいます。また、メリーの情夫を演じるハンス・アダルベルト・フォン・シュレットウや、カウンターにいる女性役のローザ・ヴァレッティなども登場します。

評価

この映画は、公開当時から非常に高く評価されました。特に、川端康成が称賛したように、ベティ・アマンの魅力が大きなポイントとなっています。彼女の演技力や存在感は多くの観客の心を掴み、その結果、作品全体の魅力を引き立てる要素となっています。映画は女性の魅力を際立たせ、その姿を芸術として昇華させる力を持っていることに気付かせてくれます。

結論

『アスファルト』は、サイレント映画の偉大な末期に制作された名作であり、現代においても観る価値のある作品です。そのドラマチックなストーリーと、魅力的なキャストによる演技は、今なお多くの人々に感動を与え続けています。

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