アセタミプリド

アセタミプリドとは

アセタミプリドは、日本曹達株式会社が開発したネオニコチノイド系の殺虫剤です。この薬剤は、昆虫の神経系に作用し、神経伝達を阻害することで殺虫効果を発揮します。

特徴

作用機序: 昆虫の神経細胞にあるニコチン性アセチルコリン受容体に結合し、神経の興奮とシナプス伝達を遮断します。
商品名: 「モスピラン」という商品名で、液剤、粒剤、水溶剤、エアゾル剤、複合肥料など、様々な形態で市販されています。
効果: 植物体への浸透移行性が高く、葉の中に隠れる害虫や果実内部に潜む幼虫にも効果があります。アブラムシや毛虫、シンクイガなどに有効です。
抵抗性: 既存の有機リン系殺虫剤とは異なる作用機序を持つため、有機リン系殺虫剤に抵抗性を持つ害虫にも効果が期待できます。
環境への影響: ミツバチやマルハナバチへの影響が比較的少ないと報告されています。

安全性

ヒトへの影響: 発がん性物質である可能性は低いとされています。哺乳類に対しては、急性・慢性毒性、発がん性、変異原性、神経毒性の影響は低いとされています。
環境への影響: 哺乳類、鳥類、魚類、爬虫類、両生類に対する亜致死作用が報告されています。

使用用途

アセタミプリドは、殺虫剤の有効成分として広く使用されています。特に以下の害虫駆除に効果があります。

蛾
カイガラムシ
コナジラミ
ブヨ
シラミなどの吸血昆虫

ドイツ、オーストリア、スイスでは、観葉植物の治療薬として主に使用されており、園芸分野ではキュウリ、トマト、ナシなどのアブラムシ駆除に承認されています。

規制

日本では、アセタミプリドの水和剤と顆粒水和剤が、毒物及び劇物取締法によって『医薬用外劇物』に指定されており、流通と販売が規制されています。購入には印鑑と毒物・劇物譲受書の提出が必要です。また、18歳未満の者や薬物中毒者への販売は禁止されており、販売店には5年間の書類保管が義務付けられています。

欧州連合（EU）加盟国では、アセタミプリドの使用が承認されていますが、一日許容摂取量（ADI）が定められています。当初は体重1kgあたり0.07mgでしたが、欧州食品安全機関（EFSA）は神経系への影響を考慮し、2013年に0.025mg/kgに引き下げることを示唆しました。

スイスでは、エンドウ豆、ネギ、ナシ、チェリー、レタスなどに対して基準値が設けられています。

事件

2008年に発覚した事故米不正転売事件では、アセタミプリドが基準値を超えて残留した事故米が、食用として転売・流通していたことが問題となりました。

参考情報

アセタミプリド農薬の完全な情報
満井 順 (2016年). “モスピラン開発の経緯を振り返って”. 農薬時代 第197号.
農薬科学の進歩－ネオニコチノイド系殺虫剤の開発(2) - archive.today
浸透性殺虫剤に関する世界的な統合評価書(WIA)の更新版


これらの情報から、アセタミプリドは農業において重要な役割を果たす一方で、適切な使用と管理が求められる薬剤であることがわかります。

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