アタプエルカ

アタプエルカは、スペインのカスティーリャ・イ・レオン州ブルゴス県に位置する自治体で、その名前は一帯に広がるアタプエルカ山地に由来します。この地域はカルスト地形が特徴で、グラン・ドリーナのような多くの洞窟が存在し、ヨーロッパにおける初期人類の活動を示す貴重な石器などが発見されています。

歴史的背景

アタプエルカは、イベリア半島内陸部とヨーロッパ大陸を結ぶブレバ山道の要衝であり、エブロ川とドゥエロ川の渓谷の接点に位置していました。古代ローマ時代にはローマ街道の一部として利用され、中世にはサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路の一部としても重要な役割を果たしました。現在では高速道路が整備され、交通の便が向上しています。また、アタプエルカは1054年にカスティーリャ王国のフェルナンド1世とナバラ王国のガルシア5世が争った「アタプエルカの戦い」の舞台としても知られています。

人口

アタプエルカ地区の人口は153人、オルモス・デ・アタプエルカ地区の人口は55人（2010年時点）です。

遺跡

20世紀後半から行われた発掘調査により、アタプエルカ遺跡では旧人類（ホモ・エレクトス、ホモ・ハイデルベルゲンシスなど）から青銅器時代のホモ・サピエンス・サピエンスに至るまでの幅広い人類の生活の痕跡が発見されています。特に有名なのが、シマ・デ・ロス・ウエソス（「骨の採掘坑」）です。この遺跡は、クエバ・マヨル（「主要な洞窟」）にある深さ13メートルの穴の底にあり、発見された人骨は少なくとも35万年前の更新世中期に遡ります。約30体の骨格を構成するこれらの人骨は、ネアンデルタール人の直接の祖先とされるホモ・ハイデルベルゲンシスのものであると考えられています。

発掘者の中には、この穴に人骨が集中していることから、洞窟の住人が埋葬行為を行っていた可能性を示唆する人もいます。しかし、これに反論する意見もあり、骨の密集具合から、小さな骨が欠けていることから自然の作用で穴に流れ込んだに過ぎないという見方もあります。また、2007年には、アタプエルカ遺跡の共同責任者であるホセ・マリア・ベルムデス・デ・カストロによって、「100万年以上前に道具を製造した人類の解剖学的痕跡」が発表され、注目を集めました。

世界遺産

アタプエルカ遺跡は、2000年にユネスコの世界遺産に登録されました。登録基準は以下の通りです。

(3) 現存する、または消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠であること。
(5) ある文化（または複数の文化）を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例であること。

アタプエルカ遺跡は、人類の進化を解き明かす上で非常に重要な場所であり、その歴史的価値は計り知れません。

外部リンク

American Museum of Natural History-Atapuerca
www.atapuerca.com

もう一度検索