アダム・ウェスト

米国の俳優、声優。1928年 9月19日にワシントン州ワラワラで生まれ、2017年 6月9日に88歳でその生涯を閉じた。特に1960年代に放映されたテレビシリーズ『怪鳥人間バットマン』で主人公バットマン／ブルース・ウェインを演じたことで、広く世間にその名を知られている。

生い立ちとキャリアの始まり

ワシントン州ワラワラで生まれたウェストは、地元の高校で学んだ後、シアトルにあるレイクサイド校へ転入し卒業。さらに地元の大学で高等教育を受けた。大学卒業後、役者の道を志し、1960年代に入るとテレビ番組への出演を始める。初期は小さな役柄を演じながら経験を積んだ。

『怪鳥人間バットマン』でのブレイク

ウェストのキャリアにおいて決定的な転機となったのは、1966年から始まった人気テレビシリーズ『怪鳥人間バットマン』である。この作品で彼は、昼は富豪の慈善家ブルース・ウェインとして、夜はゴッサムシティを守るヒーロー、バットマンとして活躍する主人公を演じた。カラフルでコミカルなこのシリーズは大きな反響を呼び、ウェストは瞬く間にスターダムを駆け上がった。

その後の活動と声優業

『怪鳥人間バットマン』での成功後も、ウェストは50本以上のテレビドラマに出演するなど、俳優としての活動を続けた。しかし、強烈なバットマンのイメージが定着したため、特定の役柄に限定されやすいという、いわゆるタイプキャストの問題に直面することもあった。映画や他のテレビ作品への出演も続けたが、『怪鳥人間バットマン』ほどの代表作には恵まれない時期もあった。

また、ウェストは声優としても才能を発揮した。長寿アニメシリーズ『ザ・シンプソンズ』には本人役で出演し、カルト的な人気を誇るアニメ『ファミリー・ガイ』では、主人公たちが住む町の市長という、風変わりな本人役でレギュラー出演し、コメディアンとしての側面も見せた。彼がバットマン役で有名であることは、多くの番組で言及され、また彼自身もアニメシリーズ『バットマン』にカメオ出演するなど、そのイメージを活かした活動も行った。

バットマン作品との継続的な関わり

1966年のテレビシリーズでバットマンを演じて以来、ウェストはその後も様々な形でバットマン関連作品に関わり続けた。

1977年から1978年にかけて放映されたアニメ『電光石火バットマン』では、テレビシリーズと同じくバットマンの声を担当した。

人気アニメシリーズ『スーパーフレンズ』では、当初別の声優がバットマンを演じていたが、後のシーズン『The Legendary Super Powers Show』および『Galactic Guardians』ではウェストが再びバットマン役を務めた。

特に印象深いのは、1992年から始まったアニメシリーズ『バットマン』へのゲスト出演である。このエピソードでウェストが演じたのは、サイモン・トレントという俳優だった。サイモン・トレントは、少年時代のブルース・ウェインが憧れていたテレビ番組のヒーロー「グレイゴースト」を演じた人物という設定だった。興味深いことに、サイモンもまたテレビヒーローとして有名になった後、俳優として低迷するという設定であり、これは現実のウェスト自身のキャリアを反映したような役柄として話題となった。

さらに、アニメ『ザ・バットマン』では、ゴッサムシティの市長マリオン・グランジ役を演じた。マリオン市長は、ブルースの亡き父トーマス・ウェインと旧知の仲であり、若いブルースを気遣う様子が描かれた。

アニメ『バットマン:ブレイブ&ボールド』のシーズン2では、ブルース・ウェインの父、トーマス・ウェインの声を担当した。このエピソードでは、テレビシリーズ『怪鳥人間バットマン』でキャットウーマンを演じたジュリー・ニューマーがトーマスの妻マーサ・ウェインの声を演じ、往年のファンを喜ばせた。

晩年と逝去

生涯現役として活動を続けたアダム・ウェストは、白血病と診断され闘病生活を送っていた。そして、2017年 6月9日、88歳でその生涯を終えた。しかし、彼が演じたバットマン像は、多くの人々の記憶に鮮やかに残り続けている。

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