アダム・ファーガソン

アダム・ファーガソン

スコットランド啓蒙思想の傑出した人物の一人、アダム・ファーガソン（Adam Ferguson、1723年 - 1816年）は、歴史家そして道徳哲学者として知られています。「ファーガスン」と表記されることもあります。彼は古典的自由主義の思想潮流に位置づけられ、特に社会学という学問分野の歴史において、その貢献が今日でも高く評価されています。

生涯とキャリア

ファーガソンは1723年、スコットランドのパース近郊、Logieraitに生を受けました。セント・アンドルーズ大学で教育を受けた後、1745年には従軍牧師の道を選び、オーストリア継承戦争におけるフォントノワの戦いにも参加しました。1754年に軍を離れ、学問の世界へ転身します。1757年には、著名な哲学者デイヴィッド・ヒュームの後任としてエディンバラ弁護士協会の図書館長に就任しますが、短期間でその職を辞し、ビュート伯爵の邸で家庭教師を務めることになります。

彼のキャリアは1759年、エディンバラ大学の自然哲学教授となったことで新たな段階を迎えます。さらに1764年には道徳哲学の教授に就任し、その専門分野での活動を本格化させました。大学教授として教鞭を執る傍ら、旺盛な執筆活動を展開します。

主要著作と思想

1767年に発表された『市民社会史論』（"An essay on the history of civil society"）は、彼の名を一躍高めた著作です。この作品は広く注目を集め、複数の言語に翻訳されるなど、当時の思想界に大きな影響を与えました。この中で彼は、人間社会の発展段階や文明の進歩について論じています。

政治的な局面では、アメリカ独立を巡る議論にも関与しました。特に、フランス革命を支持する立場であったリチャード・プライスの著作"Observations on the Nature of Civil Liberty"に対し、反対の意見を表明しました。1778年には、アメリカとの和平を目指したカーライル和平使節団の事務局を務めましたが、残念ながらこの使節団は成果を上げることができませんでした。

後期の代表作としては、1783年に刊行された大作『ローマ共和国盛衰史』（"The history of the progress and termination of the Roman Republic"）があります。この歴史書は多くの読者を獲得し、何度も改訂版が出版されるほどの成功を収めました。1785年に大学教授の職を辞した後も、彼は自らの講義内容を編纂し、1792年に『道徳・政治科学原理』("Principles of Moral and Political Science")として世に送り出しました。

晩年

70歳を迎えてから、彼はヨーロッパを旅し、特にイタリアを訪れたことが知られています。晩年はPeebles近郊のNeidpath Castleなどで過ごしました。そして1816年、セント・アンドルーズにて、92歳の生涯を閉じました。

古典的自由主義の枠組みの中で、社会の発展を歴史的、道徳的視点から深く考察したアダム・ファーガソンは、その後の社会思想にも重要な示唆を与え続ける人物です。

著作一覧

An Essay on the History of Civil Society (1767)
Institutes of Moral Philosophy (1769)
* Principles of Moral and Political Science (1792)

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