カーライル和平使節団

カーライル和平使節団

カーライル和平使節団は、1778年にアメリカ独立戦争の最中、イギリスから北アメリカへ派遣された使節団です。この使節団の目的は、反乱を起こしていた13植民地に対して大英帝国の中での自治政府を提案することでした。アメリカ側は完全な独立を求めていましたが、この使節団にはその要求を受け入れる権限が与えられていなかったため、交渉は難航しました。この使節団の派遣は、イギリス政府が大陸会議との開かれた交渉に初めて合意したことを意味しています。

背景

アメリカ独立戦争は1775年に始まりましたが、最初の本格的な交渉は1776年に行われました。第二次大陸会議の代表とイギリス海軍の提督リチャード・ハウの間での会談は、各植民地を個別に扱うことしかできない限られた権限のため、成功を収めることはありませんでした。その後、アメリカの独立宣言が発表され、戦争が激化しました。

1777年、イギリス軍がサラトガで敗北すると、イギリス政府は変革を余儀なくされました。イギリス首相フレデリック・ノースは、アメリカとの交渉による平和の実現を図るため、カーライル和平使節団の派遣を決定しました。これには、ある種の自治政府を提案する権限が与えられていました。この考えは、過去に提案されていたアイデアであり、イギリスの植民地政策の変更をも示唆しています。

使節団の構成

使節団の団長には第5代カーライル伯爵フレデリック・ハワードが任命され、他に初代オークランド男爵ウィリアム・イーデンや元西フロリダ総督のジョージ・ジョンストンが加わりました。この中で、ハワードは特に若く、政治経験の少ないメンバーとされていました。彼らはアメリカとフランスの同盟について知らずに出発しました。

出発する少し前に、北アメリカのイギリス軍総司令官ヘンリー・クリントンがフィラデルフィアからの撤退を命じていました。この情報が事前に伝わっていれば、使節団の出発は取りやめになったかもしれません。カーライルは、撤退が決まっていることを知り、彼らの使節としての役割に困惑しました。

交渉とその結果

使節団は、フィラデルフィアの大陸会議に提案を持参しましたが、アメリカ側は独立を求めるか、あるいはイギリス軍が全軍撤退することを条件にしていました。この難しい局面において、使節団は何とか交渉を進めようとしましたが、成功を収めることはできませんでした。カーライルとそのメンバーは、アメリカ側からの反発や不信感に直面し、敗北感を味わうこととなります。

その後、使節団のメンバーは本国に帰還し、イギリスは依然として軍事的な行動を続けましたが、アメリカとの平和的解決の兆しは見えませんでした。1781年には、アメリカ軍がヨークタウンで決定的な勝利を収めるまで、イギリス軍は南部戦線へとその戦略を転換します。

後日談

カーライル和平使節団の試みは、アメリカ独立戦争の状況を変えることにはつながりませんでしたが、イギリスからの提案が交わされたことは、今後の外交関係に影響を与える要素となりました。彼らの派遣が失敗に終わった理由としては、権限の限界や情報の不足、アメリカ側の確固たる独立の意志が挙げられます。歴史的に見ると、この和平使節団の登場とその失敗は、両国の関係の変化を象徴する出来事となりました。

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