アダム・フィッシャー

アダム・フィッシャー：類まれな才能と幅広いレパートリーを持つ巨匠指揮者

1949年ブダペストに生まれたアダム・フィッシャーは、世界的に名高いハンガリーの指揮者です。ユダヤ系ハンガリー人の彼は、バルトーク音楽院やウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、若くして才能を開花させました。1973年のグィード・カンテッリ国際指揮者コンクール優勝を皮切りに、カールスルーエやグラーツの指揮者を経て、1981年にはフライブルクの音楽総監督に就任。その後、ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、パリ・オペラ座など、世界の一流歌劇場で成功を収め、オペラ指揮者として高い評価を得ました。

2000年にはマンハイム国立歌劇場の音楽総監督に就任。在任中の2001年には、急逝したジュゼッペ・シノーポリの後任として、バイロイト音楽祭に『ニーベルングの指環』で初登場し、その卓越した指揮ぶりは大きな喝采を浴びました。その後も2004年まで『指環』の指揮を続け、2006年と2007年には『パルジファル』も指揮。さらに2007年から2010年まではハンガリー国立歌劇場の音楽総監督を務めるなど、その活躍は多岐に渡ります。2018年には権威あるウルフ賞芸術部門を受賞するなど、その功績は広く認められています。

フィッシャーのレパートリーは非常に幅広く、バルトーク・ベーラなどのハンガリー音楽から、マーラーや様々な歌劇まで、多様な作品を自在に操ります。特に、1987年に設立したオーストリア＝ハンガリー・ハイドンフィルハーモニーとの活動は注目に値します。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とハンガリーのオーケストラのメンバーからなるこのオーケストラの首席指揮者として、彼はハイドンの作品に新たな解釈を与え、そのハイドン交響曲全集のレコーディングは高い評価を得ています。現在も同楽団の桂冠指揮者として深い繋がりを保っています。

メトロポリタン歌劇場、バイエルン国立歌劇場、ロイヤル・オペラなど、世界中の名だたる舞台で活躍するフィッシャーですが、ウィーン国立歌劇場とは特別な関係にあります。1973年以来、26ものオペラを指揮し、2016年の同歌劇場日本公演ではワーグナーの「ワルキューレ」を指揮、大成功を収めました。そして2017年、ウィーン国立歌劇場から名誉団員の称号を授与されました。これはカラヤン、バーンスタイン、メータ、小澤征爾といった世界的な音楽家のみが与えられた栄誉です。

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を始め、ザルツブルク・モーツァルトテウム管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団など、世界最高峰のオーケストラと共演を重ね、バイロイト音楽祭やザルツブルク音楽祭にも長年にわたり出演するなど、クラシック音楽界の第一線で活躍し続けています。2015年からはデュッセルドルフ交響楽団の首席指揮者を務めており、現在も精力的に活動を続けています。弟のイヴァン・フィッシャーもまた著名な指揮者であり、音楽一家として知られています。

アダム・フィッシャーは、その卓越した音楽性と幅広いレパートリー、そして世界中のオーケストラとの深い繋がりによって、現代音楽界における重要な存在であり続けています。彼の今後の活動からも目が離せません。

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