アダム・ボリッチ

ハンガリーが生んだ強豪総合格闘家、アダム・ボリッチ（Ádám Borics）は、1993年7月7日にヘヴェシュ県エゲルでこの世に生を受けた。現在は米国の名門チーム、キルクリフFCに所属し、主にフェザー級（約65.8kg）の舞台で世界の強豪と拳を交わしている。

彼の格闘技キャリアは、16歳で始めたムエタイに端を発する。卓越した打撃センスを磨いた後、その翌年には総合格闘技のトレーニングを開始し、全ての局面に対応できる能力を養った。アマチュアでの経験を積んだ後、2014年にプロのリングへと上がった。プロデビューと同年の2014年には、ハンガリー国内の団体であるHFCのフェザー級王座を獲得するなど、早くからその才能の片鱗を見せていた。

世界の主要プロモーションであるBellator MMAには、2017年4月14日に開催されたBellator 177で初参戦を果たした。このデビュー戦で、対戦相手のアンソニー・テイラーを相手に、僅か1ラウンドでリアネイキドチョークによる一本勝ちを収め、Bellatorのフェザー級戦線に鮮烈な印象を与えた。

特に彼の名を広く知らしめたのは、2019年のBellatorでの活躍だろう。同年6月14日のBellator 222では、当時期待の若手として注目されていたアーロン・ピコと対戦。試合の大部分でピコの猛攻を受け、劣勢を強いられる苦しい展開となりながらも、驚異的な粘りを見せた。そして2ラウンド、起死回生の左飛び膝蹴りを顔面にヒットさせてピコからダウンを奪い、追撃のパウンドによるTKO勝利をもぎ取った。この劇的な逆転勝利は、ボリッチの勝負強さと爆発力を証明する一戦として、多くのファンの記憶に刻まれた。

続いて、2019年9月7日に開催されたBellator 226では、鳴り物入りで行われたBellatorフェザー級ワールドグランプリの1回戦に臨んだ。相手は元Bellator世界フェザー級王者であり、多くの実績を持つパット・カランという大ベテランだったが、ここでもボリッチは臆することなく攻め込み、2ラウンドにパウンドによるTKOで勝利。見事、グランプリの準決勝へと駒を進めた。

しかし、キャリアの新たな壁にもぶつかる。2020年1月25日、Bellator 238で行われたグランプリ準決勝で、元Bellator世界バンタム級王者であり、強力なレスリング能力を持つダリオン・コールドウェルと対戦。この強豪に対し、グラウンドで捕らえられ、1ラウンドにリアネイキドチョークで一本負けを喫した。これは、ボリッチにとってプロキャリア初の敗北となり、グランプリ優勝の夢は潰えたものの、世界トップクラスとの戦いを通じて貴重な経験を得た。

グランプリ敗退後も、ボリッチはBellatorフェザー級のトップ戦線で戦い続けた。2022年3月12日のBellator 276では、当時ランキング2位の実力者だったマッズ・バーネルと対戦し、3-0の明確な判定勝ちを収め、改めてタイトルコンテンダーとしての地位を固めた。

そして、ついに世界最高峰の舞台への挑戦権を獲得する。2022年10月1日、Bellator 286のメインイベントとして行われたBellator世界フェザー級タイトルマッチで、長年階級の絶対王者として君臨するパトリシオ・ピットブルに挑んだ。アグレッシブなボリッチと百戦錬磨の王者の間で激しい攻防が繰り広げられたが、結果は5ラウンド判定にもつれ込み、0-3で惜しくも敗北。王座獲得はならなかったが、王者と互角に渡り合う実力を示した。

アダム・ボリッチは、そのアグレッシブなファイトスタイルと、劣勢を覆す驚異的な勝負強さで多くのファンを魅了している。キャリアを通じて幾多の強敵と拳を交え、Bellatorのフェザー級戦線において常にトップの一角を占める存在として、今後の更なる活躍が期待されている。

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